三恵エンジニアリング、化学と科学の専門技術で清掃管理の発展目指す/建物の給排水・空調・熱源設備の保守管理


「清掃管理に参入したい」と那須社長

「清掃管理に参入したい」と那須専務


 高度経済成長期に勃興したビルメンテナンス業は、70年代半ば?90年代にかけて急成長。ここ数年、表面上は横ばい状態に見えるが、業界の市場規模は今や3兆5000億円にのぼる。

 とはいえ、内情は混沌としている。

 業者の乱立に伴う請負価格競争の激化がサービスの質に影響を及ぼし、技術面では玉石混交状態。しかも業務体系が複雑、多岐にわたるため、一つの建物内でも複数の業者が関わり、業者間でオセロゲームのようなシェア争いが展開されている。

 三恵エンジニアリング(座間市相模が丘1の34の27、那須隆信社長)は89年、相模原市で創業。大手の子会社でない独立系事業者だが、那須社長の専門分野である飲料水・排水等の水質やばい煙の分析等を基幹に堅実なスタートを切った。

 ただ、数あるビルメン事業の中で給排水・衛生設備の保守管理業務は、比較的専門性が高く手堅い分野ではあるものの、収益性や拡張性の面で多大な期待がかけにくい。

 そんな中、92年に子息の那須隆仁専務が入社したことが、飛躍のきっかけとなった。電気系分野を専門とする同専務は、それまで売上げの10%程度にとどまっていた空調・熱源設備の保守管理業務の拡大に注力。現在までにその比率を逆転させるまでに貢献した。

 「同じ設備保守管理でも、給排水・衛生と空調・熱源では業界が異なるようなもの。事業比率云々より、化学と科学の両分野で確かな専門技術を有する、業界でも希少な事業者になったことが重要。1+1=2・5、あるいは3にできれば」と隆仁専務は強調する。

 このため、社員はいずれかの専任とするのではなく、両業務に対応できるよう指導・配置している。また、業務上、現場の技術者がセールスエンジニア的な役割を担うことも少なくないことから、メンテ実務だけでなく、コンサルティング、コミュニケーション能力の向上にも力を入れている。

 現在、契約先の建物は東京、神奈川、静岡の3都県にわたるが、23区と横浜・川崎市内に集中している。将来的にはやはり、潜在顧客として圧倒的な物件数を誇る23区内の営業強化。それに向け、23区内への支所の設置も視野に入れている。

 さらにもう一つ、同社の大きな懸案事項となっているのが、給排水・衛生設備、空調・熱源設備の保守管理に加える三本目の矢、建物内外の清掃管理業務への参入だ。傍からは市場の大きさ、技術面で最も参入のハードルが低い分野に思えるが、そうではないらしい。

 「清掃管理は、設備の保守管理とは全く異なるノウハウが必要な上に、競争も熾烈。何とか入り込むために現在、情報を集めている」と隆仁専務。

 もちろん、設備保守管理における同社のこれまで実績が、顧客開拓の大きな武器にはなる。

 「無人の建物のマスターキーを預かるのも仕事のうち。技術、価格は重要だが、基本は顧客からの厚い信頼」

 三本目の矢を放つタイミングはそう遠くはない。(矢吹 彰/2014年12月10日号掲載)

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