相模原市、市内企業2社の事業化支援/案内ロボと車いすロボを実証実験


「ロボットのまち さがみはら」を目指す相模原市は、市内企業が開発するサービスロボットの事業化を促進するため、さがみはら産業創造センター(緑区西橋本6)に委託して実証実験支援事業を進めている。今年度は、コミュナルテクノロジーサービス(コミュナルテックス、SIC内)の多目的コミュニケーションロボットと、アクセスエンジニアリング(中央区田名)の車いすロボット「movBot ACE―Stair(ムーブボット エース・ステアー)」を採択。市内施設などを利用して実証実験を実施し、実用化に向けた評価を行う。【2024年3月10日号掲載】

 □専門知識なしに設定

QR_092459 ロボットAI(人工知能)アプリケーションの開発・製造を手掛けるコミュナルテックスは、同社が入居するSICで今月末まで実証実験を行っている。開発を進めるのは、来館者の問い合わせに対応する案内ロボット。タッチパネルや音声で操作し、訪問予定の入居企業を画面に表示して案内するほか、自ら走行して最寄りのエレベーターホールまで誘導する。参考動画(Youtube本紙公式チャンネル) https://www.youtube.com/watch?v=DdETZCmKk6I

同社が開発したロボット制御プラットフォーム「Buddiotte」は、小学生のプログラミング教材にも使われる「ブロックプログラミング」を採用している。ロボットに行ってほしい動作などを、シナリオを描くようにブロックを積み重ねるだけで設定できる。プログラミング言語を知らない人、IT知識がない人でもプログラミングができるため、医療や介護などの施設に訴求してきた。

SIC内を誘導案内するロボット

SIC内を誘導案内するロボット



将来的には、訪問先が保有する顔や声紋などの情報と連携すれば、カメラやマイクで来館者を認識して自動で案内することもできる。個人情報の業務利用が必要になるので、導入施設ごとに定める取り扱いルールとの調整が必要になるほか、投資対効果が課題になるため「デジタル受付に対する施設側のニーズ発掘が必要」(高椋大寛社長)としている。

同社は、年内に実用化に踏み切りたい考え。これまで、同社のソリューションは、省人化を図る医療・介護施設や駅構内への導入を進めてきた。今後は一般事業施設や学校、不特定多数の利用がある各種施設による採用も想定する。

高椋社長は「社名は、『地域社会のあらゆる人にとって利用可能で、使いやすくなった技術(コミュナルテクノロジー)を用いて、社会をよくするサービスを提供する』という意味が込められている」と説明した上で、「労働人口が減少する中でロボットと人が協働できる社会の実現に向けてさまざまな課題の解決に取り組みたい」と意気込みをみせた。

 □階段自走する車いす

QR_092979 材料・部品から製造設備やプラントまで幅広く取り扱う商社のアクセスエンジニアリングは、2月29日に中央区相生の市営住宅で実証実験を住民やメディアに向けて公開した。エレベーターのない施設やメンテナンス時などに、介助者や切り替え操作などなしで階段を上り下りできる車いす型のロボットを開発している。同社によると「世界で初めて」。(同社記事2022年12月5日号掲載http://www.sokeinp.com/?p=17859、参考動画https://www.youtube.com/watch?v=KmKJgQcirbg)

狭く急な階段でも自走で上り下りできる車いすロボ

狭く急な階段でも自走で上り下りできる車いすロボ



開発中のロボットは、専用のカードを各階の読み取り機にかざすと、希望者のいる場所に自動で迎えに行く。座席に座り目的階のボタンを押すだけで目標階まで移動できる。人を降ろした後、自動で充電ステーションに戻る。

ACEシリーズは、真横への平行移動や旋回などができる特殊な車輪「全方向ホイール」を、前後左右4カ所に3つずつ備えている。ロックさせた車輪3つの車輪を回転させ、段に引っ掛けるように設置させて上る。「速すぎると乗る人の恐怖心に繋がるおそれがある」と、速度は人が歩く速さ程度に設定した。

同団地の階段は43度(同社調べ)の傾斜があるが、昇降中でも座面は常に水平を保つ。4つの車輪を常に接地し、重心も走後輪の中央になるよう設計するなど、転倒防止を図っている。座面は変更可能で、荷台やかごに変えれば100㌔程度までの荷物の運搬にも使用できる。

中村光寿社長は実証実験の手応えについて、「階段の段差ごとに、踏板の角度や高さに数センチの違いがあることが分かった」と語った。

国は団塊の世代用に作られた中層階住宅にエレベーターを設置してきたが、設置費用だけで1台あたり数百万~数千万円がかかるため、改修に着手できていない中層住宅(4~5階)は25万棟以上にのぼる。一方、同ロボットの導入コストは500万円程度。エレベーター設置費の10分の1程度とし、高齢者や身体に不自由がある人などの移動手段として提案していく。

同社の中村社長は「1年以内に市販化を目指す。販売やリース、保守メンテナンスの協業先を探している」と話した。同社創業者で、電動車いす開発を始めた中村賢一会長は「リスクアセスメントの段階。外装のデザインが今後の課題になる」と明かした。

ACEのほか、医療現場向けの「NURSE(ナース)」、オフィス向けの「OFFICE」の2シリーズも展開する予定。

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