【東京都(多摩地区)公示地価】区部を含み、町田住宅地4地点がワースト/鉄道利便性が大きく影響


国土交通省が3月26日に発表した2024年公示地価で、町田市全体は2・1%(前年0・8%)、八王子市全体は2・6%(同1・1%)と、それぞれの平均変動率が3年連続で上昇した。多摩地区では再開発や区画整理などで住環境が向上した地域、駅徒歩圏内の利便性が高い地域で緩やかな上昇が続く。特に商業地ではJR中央線や京王線沿いの駅前商業地の上昇率が高く、地区の商業をけん引している。区部の住宅地・商業地、多摩地区の商業地では下落地点がなかったが、住宅地5地点が下落し、うち4地点が町田市内だった(島しょ除く)。

モノレール駅が想定される原町田

モノレール駅が想定される原町田



□各駅周辺需要根強く

商業地では、町田市の平均変動率が3・1%(同1・6%)と上昇率は3年連続で拡大。個別の地点では、小田急町田駅東口から120㍍の「原町田6―3―9」(野村証券町田支店)が変動率で3・3%(同2・2%)上昇し、1平方㍍あたり285万円(同276万円)となり価格高順位で都内(多摩)5位(前回同位)となった。

ドラッグストアチェーンが入居する同駅東口前の「原町田6―15―15」(内田ビル)も3・5%(同3・1%)上昇。同205万円(同198万円)同順位で9位(前年同位)となっている。店舗や事務所需要は回復し切らない状況であるが、中心市街地の人通りは戻りつつあり、投資用不動産の需要が強いことも背景に、商業地の需要は回復傾向にある。

変動率では、周辺で再整備計画が進む小田急線鶴川駅北口交通広場に面した「能ケ谷1―7―6」(鶴川鈴木ビル)が5・3%(同3・7%)上昇と、市内標準地でもっとも大きく変動した。自社ビル利用を目的とした一般事業者、店舗、事務所の賃貸事業を目的とする不動産業者や投資家などの需要が主。駅前とその周辺の商業地は供給が少なく、取引も少ないが、駅からの視認性は良好であるため立地優位性から需要は根強い。

八王子市では、JR八王子駅北口前の飲食店などが入居する「旭町2―6」(第1ロダンビル)が同271万円(同260万円)となり、価格高順位で都内(多摩)6位(前年同位)となった。変動率は4・2%(同2・0%)。八王子駅北口ロータリーに接面する市内でも繁華性と稀少性のある商業地であり、需要者の優良物件に対する投資マインドの改善などにより、地価は緩やかな上昇傾向への転換がみられる。

□交通利便で差大きく

住宅地では、都内下落率順位ワースト5位中、2位を除く4地点が町田市内となった。一方、町田駅に近く公共施設も集まる原町田、中町、森野、グランベリーパークや東急田園都市線駅がある鶴間、南町田などで4~5%台と市内では強めの上昇がみられた。

町田市内の下落地点

町田市内の下落地点



町田薬師池公園と町田ぼたん園の間にある分譲住宅地内の「野津田町字暖沢前3210番211外」が、変動率マイナス1・0%(前年同率)でワースト1位。最寄りの小田急線鶴川駅から3・5㌔前後と交通利便性で劣り、丘陵地に位置するため需要は多いとは言えず、地価は低調となっている。居住の快適性が重視される傾向が強い。

3位は、鎌倉街道(主要地方道府中町田線)や小野路GIONグラウンドに近い「小野路町字栗ケ沢2672番20」。マイナス0・6%(同マイナス0・9%)とやや改善したが、2位の野津田同様、最寄りの鶴川駅と約4㌔離れている。

「図師町字一号84番84」がマイナス0・2%(マイナス0・3%)で4位。市立室内プールや図師日影坂下公園などに近い住宅街だが、最寄りのJR淵野辺駅(相模原市中央区)まで約3㌔離れている。町田市中心市街地への接近性や交通利便性に劣るものの、居住環境が良好な郊外部の住宅地域であり、相場の割安感等の総額の観点から需要が認められる。

5位の「相原町字大戸4640番2外」は都道八王子町田線(町田街道)の面しているが、最寄り駅のJR相原駅まで約4・6㌔とバス便利用の住宅地域となっている。マイナス0・2%(同マイナス0・5%)と下落幅を縮小した。自己利用目的に取得する圏内居住の地縁性ある個人や周辺市に車で通勤する1次取得者の需要がある。

□工業地は中小需要

大規模工業地は物流施設などの用地としての需要がみられるが、小規模工業地は地元の中小事業者に需要が限定され、地価の上昇が限定的となっている。八王子市では近年、上昇と下落を繰り返しており、24年は下落に転じてマイナス8・6%となった。

オリンパスやコニカミノルタ、カシオ計算機などが拠点を置く北八王子工業団地内の「八王子市石川町2968番9外」は10・1%(同9・0%)の上昇と好調。インターネット通販事業の拡大などの影響により大型物流関連施設への需要が増大しており、地価は上昇傾向で推移している。

北野工業地区内の「北野町587番2」は7・1%(同9・4%)と上昇率を縮小させた。自己利用が多いため賃貸に供されている倉庫などが少なく、規模的にマルチテナント型倉庫等は想定し辛いことから収益価格は低位に求められた。一方、工場または流通業務用地の取引事例、代替関係にある事例を収集し適正に査定できたことから、比準価格の信頼性は高い。

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