茅明夫さん、淵野辺の商業振興に尽力/キーワードはJAXAと学生


「若い人材がどんどん出て来てほしい」

「若い人材がどんどん出て来てほしい」



相模原市立鹿沼公園で8月5日、今年で5回目となる「ムーンウオーク世界大会」と銘打ったイベントが開かれる。7年前に奇跡の帰還で日本中を感動の渦に巻き込んだ小惑星探査機「はやぶさ」のふるさとという地域特性を生かして、地元のにこにこ星ふちのべ商店会が開催している名物行事の一つだ。40年以上にわたり商店会役員として活躍している茅明夫さん(67)に、淵野辺の商業振興と知名度アップに向けた取り組みの現状を聴いた。

(編集委員・戸塚忠良/2017年8月1日号掲載)

 

■JAXAへの親近感

淵野辺は1989年4月に市内由野台へ移転してきた文部省宇宙科学研究所の最寄り駅となったため、「銀河をかけるまち」の愛称がつけられた。

宇宙研がJAXAに組織替えされた後は協力関係が深まり、そのハイライトが2010年6月のはやぶさの帰還だった。連日マスコミで報道され、快挙にわく地元淵野辺の喜びの表情も大きく伝えられた。

この時期を思い返して茅さんは「はやぶさが全国的に発信されることで、街と商店会が元気をもらった。それが自信につながった。JAXAの先生たちとのつながりも生まれ、商業者にもJAXAとの連帯感というような気持ちが深まったと思う」と話す。

毎年のJAXA相模原キャンパスの一般公開は大盛況で、子どもたちが目を輝かせながらロケットの模型など宇宙への夢を育む展示に見入る姿が見られる。今年も8月25・26日に実施される。

商店会は、はやぶさの後継機はやぶさ2の打ち上げを応援し、駅前にパブリックビューイングを設置するために奔走した。茅さん自身も打ち上げ地の鹿児島県種子島に足を運んだ。「残念ながら二度延期になり、自分の目で見ることはできませんでしたが、地元に帰ってから、パブリックビューイングで打ち上げをみることができました」という。

また、個人としても全国7市町の銀河連邦共和国を巡るスタンプラリーを企画し、ことし6月にスタートさせた。市内のスタンプは、ボーノ相模大野内のアンテナショップ「サガミックス」に設置してある。すでに1人達成者がでたという。

■ムーンウオーク

8月5日午後6時30分にスタートするムーンウオーク世界大会は、大野北地区の地域一体のまちおこしイベント、大野北銀河祭りの一環として行われる。ガチ部門とおもしろ部門の2部門で自慢のダンスとコスチュームを競う。商品は商店会で使える商品券など。

「商店会の若いメンバーから銀河のまちでムーンウオークをやろうという案が出て、それならまだどこでもやっていないはずだから世界大会にしようという話にふくらんだ」と茅さんが楽屋裏を明かす。

過去には一般応募者のほか、吉本の若手芸人なども参加して話題となった。今年も参加者が、思い思いのパフォーマンスを繰り広げ、来場者を楽しませてくれそうだ。

 

■大学との連携

淵野辺には麻布大、桜美林大プラネットキャンパス、青山学院大が立地しており、商店会は大学とのさまざまな連携事業を重ねている。

連携が深まるにつれて人的な交流も活発になっており、商店会が主催するイベントで桜美林大、麻布大の学生がボランティアとしてごみの分別回収などに協力する姿が見られる。

今年1月、商店会は青学大の箱根駅伝3連覇を祝うパレードを開催した。「思いがけず、3万人もの人たちが参加してくれました。多くの市民に青学大と淵野辺への親しみを深めてもらえたと思います」と茅さんは表情を和らげる。

■役員歴40年

そんな茅さんの半生の軌跡は淵野辺の商店街の歩みと重なっている。

1949年12月、淵野辺に生まれた茅さんの生家は41年創業の金物雑貨店「いなげや」。北中、厚木高を経て中央大理工学部に入学。管理工学を専攻し、卒論は「因子分析」という題で消費者の購買動機などを論じた。

大学卒業の年、父親が病に倒れたため家業を継いだ。「高度成長期で景気はよかった。淵野辺にはスーパーがなく、商店街は元気だった」と回想する。

やる気に溢れ、商店街の会合でも大いに気を吐いた。「生意気だったんですね」と苦笑するが、まだ20代半ばから役員を務めることになり、昭和50年代に市に押し寄せた大型店進出ラッシュに際して、交渉の最前線に立ったこともある。

渉外担当役員を務める今も、淵野辺の商業振興に力を尽くす姿勢は少しも変わらない。

「淵野辺の未来に向けたキーワードは?」との質問には、「まず、駅南口の再整備に商業者の声を生かしてもらうこと、もう一つは地域と学生との連携をもっと深めていくこと」と歯切れよく答え、「今、商店会の新しい事業を計画している。秋には発表できると思う」と意欲あふれる口調で語る。

 

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