相澤恒さん、未加入開業医に加入呼びかけ/地域に活きる歯科医師会


相模原市歯科医師会会長の相澤さん

 相模原市歯科医師会会長の相澤さん

 相模原市歯科医師会会長の相澤恒さんは1943年、新潟県上越市の出身。祖父は当時、日本に一つしかなかった歯科専門学校に学んだ歯科医で、父も歯科医だった。日本大学歯学部に学び、相模原市小山の現在地で開業してから41年。患者から深い信頼を寄せられている。会長を務める市歯科医師会は、市民のためのさまざまな事業に取り組んでいるが、その反面未加入の開業医も多い。相澤さんは「ぜひ加入して、歯科医師会の事業に参加してほしい」と呼びかけている。
(編集委員・戸塚忠良/2017年2月10日号掲載)

■歯科医3代

 雪深い越後に生まれた相澤さんは高田高校に学んで柔道部に所属し、雪国っ子らしいがまん強さ、ねばり強さで厳しい稽古に耐えた。「当時は体重制が無かったので、小柄で体重も軽い私は重量級の相手が苦手だった」と回想するが、初段まで上達した。

 祖父も父も歯科医だったので卒業後の進路選択に迷うことはなく、日大歯学部に進学。そこで父の一年先輩で歯科放射線学の権威、安藤正一教授と出会い、その薫陶を受けた。

 1968年に卒業した後、助手として大学に残り、さらに科学技術庁放射線医学総合研究所に勤めた後、再び日大にもどって研究を深めた。73年から講師と歯学部放射線教室勤務の二役をこなし、74年に歯学博士を取得した。

 「助手の頃は毎日、実験を繰り返し、放医研では全国から訪れるがん患者の放射線治療を行った」という。75年には恩師安藤教授との共著『オルソパントモ撮影法―原理、技術とその診断寄与』を刊行した。

 恩師が定年退職した76年、「私も退職して故郷に帰ろうと考えていた」が、思いがけないきっかけから相模原との絆が生まれた。

 もともと4人兄弟の次男である相澤さんには冽(きよし)さんという弟があり、橋本に住んでいた。その冽さんが「相模原へ来ないか」と誘ってくれたのである。

■相模原市へ

 当時、人口急増期に差しかかっていた市にとって、医療体制の整備は喫緊の課題。なかでも歯科医院の数が足りておらず、当時、歯科医院の誘致は市の政策でもあった。

 こうした背景もあって、市議会の評価額に基づいて市有地の売却を受けた相澤さんは76年12月、歯科医院を開設した。「開業したら問い合わせと予約依頼の電話が鳴りっぱなしで、とても受けきれず、受付の事務員は断るのに苦労していました」と回想する。

 また往時と今を比べて、「開業時には診療に訪れる患者さま、とくに高齢者の歯と口腔の状態は悪いことが多かった。今は虫歯が減り、口腔状態も良くなっている。歯科医師会の8020運動(80歳でも20本以上の歯を保つ)などの啓蒙による効果があると思う」と話す。

 開業と同時に市歯科医師会に入会し、常務理事など多くの役職を歴任。日本学校歯科医会常務理事、県歯科医師会代議員(現任)など数多くの要職を経て、2009年相模原市歯科医師会会長に就いた。

■歯科医師会の事業

 歯科医師会の現在の会員は286人。多様化する市民のニーズに応えるため、市と連携してさまざまな事業に取り組んでいる。

 市からの委託事業は、成人健診(歯科健康診査)をはじめ、乳幼児歯科健診、就学時健診があり、幅広い世代の市民の「お口の健康」を守っている。

 このほか市職員健診、歯科に通うのが困難な陽光園利用児者を対象にした健診も実施。12年度からは口腔がん検診も年3回実施している。

 市からの補助を受ける諸事業のうち、高齢者等健診では老人クラブや高齢者施設などで「お口の健康教室」を実施し、参加者から「口の中が清潔になって食べ物もおいしく、毎日を楽しくすごせる」といった声が寄せられている。

 また、「高齢者よい歯のコンクール」には毎年100人前後の応募があり、表彰式では孫たちの歓声が響く。

 急患に対応するための年間72日の休日急患診療は市民の安心・安全な生活に貢献しており、在宅・施設訪問による診療と口腔ケア事業は2015年度、在宅で18人、施設で2719人が利用した。

 同年度の障害者診療は2512人が利用し、このうち19人が全身麻酔のもとでの治療だった。  

 このほかHIV感染者の歯科診療も行っている。

■会員の和支えに

 こうした市民生活に密着した事業を説明しながら、相澤さんは「会員が協力しあって実施している」と、会員相互の信頼感の強さに胸を張る。

 その一方、会に未加入の開業医が少なくないことには温顔を曇らせ、「市民への貢献をいっそう充実するためにも、加入してほしい」と力を込めて呼びかける。

 活動の標語に『健康な心と身体はお口から』を掲げる相模原市歯科医師会。その会長を務める相澤さんを支えているのは、「地域に活きる歯科医師会でありたい」という揺るぎない思いと会員の和だ。

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