明星大チームが調査、トンボ生態に稲作関与か/南多摩の中山間部で確認


昆虫学会で成果を発表する渡邊さん

昆虫学会で成果を発表する渡邊さん

 トンボの生態系に稲作などの人為的な環境変化、中山間部の谷戸水田が深く関与していることが分かってきた。明星大学非常勤講師の田口正男さん(相模原市中央区、県立上溝南高校元教頭)が、理工学部4年・渡邊陽香さんの卒業研究に協力して、南多摩の中山間部におけるトンボの生息状況を調査した。

 トンボは幼虫(ヤゴ)期に淡水域、成虫期に陸域で生活するため、それぞれの環境の質を反映しやすい指標昆虫の一つとして扱われている。種類によって産卵する場所や成虫に変わる時期などが異なるほか、種族間競争や他の生物と密接な関係がある。

 調査場所は、多摩美術大学八王子キャンパス(八王子市鑓水)の北側にある谷戸水田。8月31日から11月15日まで13回、不定期に個体数を調べた。期間中の10月11日と12日の稲刈りを機に、ナツアカネからアキアカネに優占種が変遷したことを確かめた。

 田口さんは「都市の自然再生に求められるのは生物多様性であり、そのモデルは中山間部の農地だ。公園や学校にビオトープを整備する動きがあるが、科学的な裏付けをもって進めることが望ましい」と指摘している。

 研究成果は昨年12月4日、玉川大学で開かれた日本昆虫学会関東支部大会で渡邊さんが発表した。トンボの越冬の形態やヤゴの生態系について調査を始め、トンボと環境の関わりについてさらに詳細な調査を進めていくという。

 渡邊さんは設計事務所への内定が決まり、「研究のフィールドワークで得た経験を生かし、環境を保全・再生できるプランを提案していきたい」と意気込む。
(芹澤 康成/2017年1月10日号掲載)

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