ほねつぎ、接骨院、整骨院―表記は異なれど、実は三者は同一。骨折、脱臼、捻挫、挫傷等を治療する柔道整復師の施術所のことだ。
近年、国家資格である柔道整復師を養成する専門学校や大学が急増。これに伴って整復師、施術所の数も大幅に増えた。
「当時は学校も少なく、この資格を取れば、とりあえず一生生活には困らないと言われていた」
こう振り返る徳永英光氏は、1998年に「徳永接骨院」(相模原市中央区渕野辺)、2012年に「かみみぞ徳永整骨院」(同上溝)を開業し、総院長を務める。世の趨勢とはいえ、想定外の思いもあるようだ。
実際、相模原市内にも現在150ほどの施術所があり、エリアによっては美容院や歯科などともに、過当競争の波にさらされつつある。
こうした中、各施術所は看板やチラシ、ホームページ等をフル活用してPR合戦を展開。このまま増え続ければ、こと肩こりや腰痛、姿勢矯正など、健康保険適用外の施術領域については、治療費の価格競争で患者を取り合う泥仕合にもなりかねない。
徳永総院長が営む2つの施術所も、徒歩圏に複数の同業者がいる激戦区。老舗であることやリピーターによる口コミが、ある程度の優位性をもたらしてくれてもいるが、その上にあぐらをかいているわけにはいかない。
そんな厳しい状況下、徳永総院長は冷静に現実を見つめながら確たる将来構想を描き、既に歩み始めている。
「これからは同業者同士が競争するのではなく、協力し合い、新たな市場を創出することが大切」
新たな市場のコンセプトは明快。従来の、痛みを治療する「マイナスからゼロへの施術」ではなく、スポーツ等でより高いパフォーマンスを目指す、あるいは末永く健康を維持するための「ゼロからプラスへの施術」の普及だ。
その第1弾として昨年から力を入れているのが、ゴルファー向けボディケアプログラム「姿勢整体」。施術により関節の可動域を広げるなど肉体改造の領域に踏み込むことで、技術面のレッスン効果を高め、パフォーマンス向上やゴルフを長く楽しむための健康体の維持を目指そうというものである。
主要ターゲットは熱心なシニア層ゴルファー。プログラムの普及には整復師だけでなく、ゴルフ(練習)場やレッスンプロとの協力関係が不可欠となる。
既に徳永総院長は、市内3か所のゴルフ練習場で同プログラムの普及イベントを定期開催。さらに昨年11月には、志を一つにする全国の同業者を集めて(一社)日本姿勢医学協会(代表・徳永氏)を設立するなどして、新市場創出、普及に向けたビジネスモデルの構築に努めている。
また同総院長は、事業所へ定期的に出向いての往診施術にも意欲的で、顧客獲得のため自ら営業にあたっている。
(編集委員・矢吹彰/2016年3月1日号掲載)