ラ・ガール、信頼関係を築く経営哲学で四半世紀/ブティック


独自の経営哲学を貫く野澤代表

独自の経営哲学を貫く野澤代表

 中央林間駅にほど近い閑静な住宅街の一角に佇む、パティオのあるおしゃれな建物。戸建住宅のようだが、奥に垣間見える室内の様子からは何やら隠れ家的店舗の風情が漂う。

 それがラ・ガール(大和市中央林間、野澤秀子代表)。仏語で「駅(gare)」という名のブティックだ。
 1989年、南林間にオープン。15年ほど前、ここに移転した。

 「都心で定期開催される取引メーカーの展示会にアクセスするには、田園都市線が便利」

 こう話す野澤代表は栃木県足利市に生まれ育ち、大学卒業後は地元や都内でスタイリストとして活躍。28歳で結婚し、大和市に転居後もしばらく仕事を続けていたが、つわりがひどい体質で出産を機に離職せざるを得なくなった。

 「著名人の顧客を抱えるなど上昇気流にあったので残念な思いはあるが、4人の子宝に恵まれた」と振り返る。

 スタイリストという趣味・娯楽性の強い職歴に加え、子育て中はアンティーク家具・装飾や美術品収集の趣味が高じて古物商の免許を取得。一段落するや、水を得た魚のように何か事業を始めるのは必然の流れだった。

 「古美術商かブティックの二者択一という中で、骨董は年をとってからでも始められる」との決断から、住宅街に隠れ家的ブティックがお目見えすることとなった。

 元来高級イメージ漂うブティックの敷居は高いが、同店には野澤代表ならではの敷居がある。その一つが“一見さん”への対応だ。

 「最初の来店では、冷静な思考が働かない。自由に店内を見てもらい、話があれば聞く。こちらからの具体的な提案は、何度か来店を重ねてから」

 一方、常連客に対しても、営業目的のDMや電話は一切行わない。ドライな対応に思えるが、結果的にこれが顧客と店との信頼関係に繋がる。

 「豊かなライフスタイルは服だけでは成り立たない。アクセサリーや食器、花などさまざまな要素がトータルで関わってくる。単品でただ物を売るのではなく、スタイリストの観点からセレクト力を磨くことの大切さを客に伝え、より上のレベルを目指してもらう」

 オープンから四半世紀。経済情勢も人々の価値観も大きく変化した。著名ブランドの栄枯盛衰も激しい。そんな中、同店が安定経営を持続してきた要因は、野澤代表のブレない姿勢にほかならない。独自の敷居が店と顧客との信頼関係を築く礎となっているのだ。

 専門性の強い分野で厳しい時代を逞しく生き抜く同代表の生き様は、子どもたちにも好影響を及ぼしている。長男は南林間で鍼灸・マッサージ治療院、次男は都内で美容室を開業。次女も鍼灸・マッサージの勉強中だ。

 「服飾品が健全な身体、メンタルづくりにつながるような提案をしていきたい」と同代表。
 奇しくも、親子のビジネスネットワークが構築されつつある。
(編集委員・矢吹彰/2015年12月10日号掲載)

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