中村鳴美さん、不登校児の自立を支援/フリースクール「鈴蘭学園」


心理カウンセラーの中村さん

心理カウンセラーの中村さん

 鈴蘭学園(中央区矢部)は、引きこもりや不登校の子どもたちに安心して過ごせる場を提供するフリースクール。代表の中村鳴美さん(心理カウンセラー)は自分も子育に深く悩み“うつ”に近い状態を経験したことがあり、8年前に鈴蘭学園を開設した。今年4月に現在地に移転し、夜の学習支援事業にも着手。NP0化の手続きも済ませ、県教委や県内学校と連携して、心に傷を負った子どもたちが学校生活を再開し、将来の社会的自立への道を開くために奮闘している。(編集委員・戸塚忠良/2015年7月10日号掲載)

■子育てに悩む

 中村さんは群馬県高崎市の出身。短大卒業後千葉県浦安市の不動産会社に勤め、売買の営業担当として活躍した。バブル経済期とあって仕事は極めて順調。ストレスがたまるような営業をしなくても、仕事が向こうからやってくるほどの景気だった。東京ディズニーランドの開園イベント、趣味の海外旅行などを楽しみ、都内の劇団に所属して舞台とテレビで演じた経験もある。

 故郷を出て上京したとき胸の中に燃やしていた「自分のしたいことをしよう。何にでも挑戦しよう」という思いをそのまま形にしたような日々だったが、今では「自分のしたいことができたのは、やはり、実家という自分の帰る場所があったからだと思います」と振り返る。

 29歳で結婚して横浜市へ。それまで思い通りの生活を送って来た中村さんは初めて挫折を味わい、深い悩みに陥る。「2人の子育てに悩んで精神的に疲れ切ってしまいました。子どものことだけはどうにもならないと、落ち込んでしまったのです。一年の半分は実家に戻って、母親に子育ての仕方を教えてもらいました」という。

■カウンセラーに

 胸塞がる思いが続いていたある日、ふとある新聞広告が目に止まった。うたい文句は『心理カウンセラーの資格を取りながら自分も変わりましょう』。心理カウンセラーとは人の悩みを聞き、相談に乗る仕事。国家資格は無く、民間の教育機関や団体が各自に認定している。

 「今の悩みから少しでも脱け出せれば」と考えた中村さんは、都内にあるこの心理スクールの門を叩き、自分もカウンセリングを受けながら、カウンセラーの資格取得に必要な勉強を重ねた。「人の心に寄り添い、その人の悩みを聞いてあげることの大切さを知り、それまで気が付かなかったいくつもの発見がありました」と、中村さんは資格を取るまでの2年間を回顧する。

 新たな生きがいを手にした中村さんは早速、東京・渋谷のフリースクール高崎学園で子どもたちのカウンセリングを担当することになった。「フリースクールと心理カウンセラーのコラボで、不登校や引きこもりの子どもに自信と自分らしさをとりもどしてもらうのが目標でした」。

■鈴蘭学園開設

 子どもたちと膝を突き合せてカウンセリングするのは初めての経験。相手の話に耳を傾け、心を開いてもらうように接する中で、多くの実践的な知識とかけがえのない体験を積み重ねた。

 1年間一緒に過ごした生徒が最後の夜、「先生のお陰で高校に進める」と感謝の言葉を口にしながら別れの電車に乗り込み、ドアが閉まると同時に大粒の涙を流すという、ドラマさながらのシーンも体験した。

 次第に自分でフリースクールを開きたいという思いを募らせていた頃、中村さんの気持ちを打ちのめすような事態が起こる。子育てに悩んでいた頃自分を励ましてくれた母親がガンに侵され、余命3カ月と宣告されたのである。

 「その母と一緒に洗濯物を干しながら、『フリースクールをやりたい』と話したら、昔幼稚園の先生をしていた母は『子どもに手を差しのべるのはとてもいいことよ』と答えてくれました」。スクールの名称も相談すると、『花の名前はどう?』とヒントをくれました」。実家の庭にはスズランの花が沢山咲いていた。

 こうしたエピソードもあって8年前の4月、知り合いが経営する塾の建物の2階を借りて「鈴蘭学園」を開設した。スタッフは自分と友達の2人だった。横浜線や八高線沿線にチラシを配ってPRしたが、最初の一年は生徒ゼロ。友達は学園から去った。

■生徒と共に

 鈴蘭学園の最初の生徒は、非行で少年院に送られた過去のある2人の不登校中学生だった。子どもたちとの対話に努め、なかなか心を開こうとしないしない生徒に「自分が将来何をしたいのかを手紙に書いてほしい」と説き聞かせたこともある。

 最近は発達障害を持つために学校の勉強についていけない子や引きこもりになった子どもが通うようになっている。来園日は火曜日から金曜日の午前10時から午後4時。小学生から18歳の少年まで8人が通っている。このうち2人は中村さんが自宅に足を運ぶ訪問スクールだ。もちろん、親からの相談にも応じている。

 「いちばんたいせつなのは子どもです。少しでもここに長くいたいという気持ちを起こしてくれるように、一人ひとりに合ったペースで楽しく過ごしてもらえるように努めています」と語る中村さん。心に傷を負った子どもと保護者を支える気持ちにぶれはない。

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