双和製作所、津久井の田園地域で時代を担う若手を育成/ステンレス製品に板金・溶接・組立て


自主性を尊重し人材を育成する斎藤社長

自主性を尊重し人材を育成する斎藤社長

 「募集しても来るのは中高年ばかり」「若い世代は長続きしない」

 相模原市内の中小企業ではこんな嘆き節をよく聞く。とりわけ悩みが深いのが、ものづくりに携わる工業系の企業だ。

 食品関連のプラント設備等、ステンレス製品の加工を手掛ける双和製作所(相模原市緑区根小屋2078、齋藤睦社長)は、若手を中心に30人の社員を抱える。

 事業所周辺の自然環境は抜群だが、交通便は決して良くないし、近隣には繁華街も娯楽施設もない。しかも仕事は、いわゆる“3K”に属す。

 それでも社員の平均年齢は32歳。最年少は今春高校卒の18歳。作業場に若い女性の姿も複数ある。

 「ここ数年、雇用は人づてが主体。定着率は7~8割」と話す齋藤社長は50歳。3年前に事業を引き継いだ三代目だ。

 同社は1969年、齋藤社長の父と伯父が共同で創業。まもなく酒や味噌の製造業者との取り引きが増え、圧力タンク等の槽類を手掛けたことから、ステンレス製品の板金、溶接、組み立てが基幹となった。

 鉄や銅、アルミ等と比べて優れた防錆性、耐食性、光沢性を有する反面、加工難易度の高いステンレスを扱うことが技術面での付加価値を生み、着実な成長につながった。

 以来40余年、普及とともに取扱業者も増えたが、加工しにくい鋼材であることに変わりはない。現在最大の取引先は飲料メーカー。同社の経験、実績に対する信頼は厚い。

 ただ、技術、経験といったものは、書類や設備によって社内に蓄積されるわけではない。礎はあくまで人。創業46年ともなれば、次世代の人材確保と育成が必須だ。

 「きっかけは数年前に採用した社員が、母校である地元の定時制高校の後輩を連れてきたこと。そこから、在校生がアルバイトとして来る紹介例が出てきた。卒業式には必ず出席するが、入社を強制したりはしない」と齋藤社長は話す。

 卒業生からすれば、気心知れた先輩が社員にいて、社長とも面識があり、仕事も馴染みある地元企業。同社としても、社員、社長との顔合わせも簡単なOJTも既に済ませている新卒者。入社に至るのは必然的な流れだ。

 育成面でも同社の取り組みはユニーク。仕事の核となるアルゴン溶接で一人前になるには最低5年はかかるが、同社では手取り足取りの口うるさい指導も、「見て覚えろ」などと突き放すこともない。つぼを押さえた指導をベースに、できるだけ本人の自主性を促す。

 「例えばバイクや車の部品を自作したいなら、申請すれば、時間外に工場設備を利用できる。求められれば技術的な助言もする。私的なことでも、仕事につながる取り組みは大歓迎。職人仕事の素晴らしさを自ら感じ取ってほしい」と齋藤社長。

 来秋、金原工業団地の西側隣接地に土地を取得し、本社工場を新設予定。さらなる成長に向け、社内全体の大きなモチベーションになっている。(編集委員・矢吹彰/2015年7月1日号掲載)

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