オリーブの実、心つかむ営業で販路開拓/お客様満足度を最優先


思いやりが大切と話すの須賀節子さん

思いやりが大切と話すの須賀節子さん

 「人の心は七変化。ころころ変わります。だからどんなに断られても同じ相手に7回は営業に行きます。営業という仕事は相手の心をつかむことが目的だと思います」。総合フードサービス「オリーブの実」(相模原市中央区上溝)代表取締役の須賀節子さんは元気あふれる声でこう語る。言葉通りの精力的な営業活動を20年にわたって続ける一方、夜明け前から調理場に立って幼稚園給食や仕出し弁当の段取りを整え、介護施設での食事作りにも奮闘。さらに会社の事務や打ち合わせ、参加する団体の会合などで忙しい日々を過ごしている。それでも笑顔を絶やすことはない。(編集委員・戸塚忠良/2015年7月1日号掲載)

 ■喫茶から給食へ

 須賀さんは宮崎県生まれで鹿児島県育ち。静岡県三島市に嫁ぎ1977年、夫の転勤で相模原市に転入した。10年ほどたったとき、陽光台で近所の人と一緒にサンドイッチの店を始めたことが今の仕事につながる。

 顔見知りの地主に声を掛けられて94年、JR番田駅前でコーヒーとサンイッチの「オリーブの実」を開業した。広さは8坪。

「駅を利用する人の中には周辺の外資系企業に勤める外国の人もいますので、イギリスやアメリカ、イスラム教の国のサンドイッチってどんなものだろうかと一生懸命勉強しました」と須賀さん。弁当製造にも乗り出した。

 開業を勧めてくれた地主は幼稚園を経営していたため、須賀さんの一途な努力ぶりを見て「幼稚園の給食を任せたい」と提案。

 「オリーブの実」は幼稚園給食に参入することになった。

 ■全力で営業

 これを機に須賀さんは持ち前のバイタリティーを発揮して市内と周辺の幼稚園、保育園への営業を開始。彩り豊かな見本を持参し、「子どもたちに必ず喜んでもらえます」と手作りサンドイッチの良さを説明した。しかし、簡単に受け入れてくれる園はめったになく、何度も足を運んでお願いする日々が続いた。

 営業まわりの辛い思い出は数々あるが、断られても断られても新しい商品の見本を届け続けた幼稚園で4年目のある日、園長がにこやかな表情で「いつも見本を有難う。とりますよ」と言ってくれた。うれしい思い出だ。

 何度も断られた別の幼稚園では、保護者会から「オリーブの実のランチを使ってほしい」という声が上がり納入に至った例もある。「一生懸命にやっていれば、見てくれる人はいます。周りの人が自分を盛り立ててくれるのですね。その思いは今までずっと持ち続けています」。

 次第に周辺の事業所や市役所などへの配達弁当、ケータリング、県立高校の売店と食堂の経営、出張パーティー、介護配色などに手を広げ、毎月1千万円ほどの売り上げを確保するようになった。

 ■原価率50%

 仕事を始めた当初から「もうけより徳を積みたい」という信条を持ち、どんな場合にも原材料費を惜しまない。だから原価率は50%にのぼるという。親しい人から「原価率が高すぎる。もう少し考えたら」とアドバイスされることもあるが、方針を変えるつもりはない。

 「厳しかった父、優しい母の教えと、医師として地域の人たちのために尽くした弟の生き方から、人を思いやることの大切さを学びました。相手の思いをかなえることがいつか自分に返ってくる…、その思いを忘れたことはありません」という言葉には、まごころがこもる。

 人を信用しやすく、「他人の懐に飛び込んでいく性質」に付け込まれて負債を背負いこむ羽目に陥った苦い経験もある。だがこのときも、懇切に返済の相談に乗ってくれた信用金庫の職員と知り合うことができた。「感謝の気持ちを忘れずに生きることの大切さを改めて感じました」という。

 ■メニューなし

 配達弁当は日替わり、魚料理、ヘルシー、アラカルト、おまかせなど毎日8種類から10種類用意する。「私の自慢は、杉山成治店長が気持ちを込めて丁寧に調理し、従業員みんなが店長を見習ってきちんと仕事をしていることです」と女性社長は胸を張る。従業員は約40人。

 企業の会議や懇親会、学校行事、各種パーティーなどへの出張注文にも応じているが、「ウチには固定したメニューはありません」と話す通り、注文を受ける際に相手の予算と希望にしっかりと耳を傾けた上で料理の内容を提案している。こうした形での受注の仕方も、これまでの実績と利用者の満足度の高さがあればこその手法と言えよう。

 商工会議所一号議員、同女性会会員などをはじめいくつかの団体のメンバーとしても活躍しており、仕事と両立させる慌ただしい生活の中で健康の維持に気を使っている。最近アロエの効能を体感し、新たな業務として今年、アロエ・サロン(相模原市中央区千代田)を開設した。

 今抱えている経営上の問題は、子供の数の減っていること。この逆境も利用者の心をつかむ営業力をフルに発揮し、ケータリングの開拓で乗り越えていく考えだ。

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