サンマルコ、「明るく誠実に」を大切に/提案型営業で市場開拓


「誠」を大切にする丸子社長

「誠」を大切にする丸子社長


 明るく誠実に―。ガラスフィルムや内装シートを扱う「サンマルコ」(相模原市緑区)の創業者・丸子勝基社長。住友スリーエムでの約30年間のサラリーマン人生に転機を与えたのが、多くの機能を持つ「ガラスフィルム」だった。その出会いが、50代後半でリスクの大きい独立へと駆り立てた。時代のニーズを巧みに捉えた企画提案営業で、新たな商品や新たな市場を開拓していく。     (芹澤 康成/2015年2月20日号掲載)

 ■会計士の道へ

 太平洋戦中の1942年に山形県山形市で生まれ、兄と姉、妹2人の5人兄弟の中で育った。

 小学校高学年には「誠実」を大事にしようという気持ちがあり、日記に「誠」と大きく何度も書いていた。サンマルコの社是「明るく誠実に」の原点がここにある。

 上智大学経済学部を卒業した64年、スライドファスナーで有名な吉田工業(現・YKK)に入社。すぐにYKKファスナー販売に出向となり、営業としてご用聞きと配達に飛び回っていた。

 日々の仕事だけでは飽き足らず、入社2年目から中央大学経理研究所夜間コースに通い始めた。将来は税理士か会計士になるため、勉強に専念したいと考えるようになったという。「当時から、独立心があったのかもしれない」と丸子社長。

 吉田工業を3年余りで退社。山形の実家に帰郷し、独学で公認会計士取得のための受験勉強を開始した。

 吉田工業仙台営業所の所長が「山形の代理店になってもらいたい」と、丸子社長の元を3度訪れた。しかし、初志貫徹とばかりに、頑なに拒否して受験に打ち込んだ。

 再度上京し、中野区に下宿した。東京駅の日本食堂で皿洗いのアルバイトをしながら、残りの時間を勉強に費やした。収入が少なく、近所の食堂で「ある時払い」で食事をさせてもらっていた。

 ■住友3M入社

 新聞の求人広告に掲載されていた「原価部員募集」に応募した。会計士合格の目的達成に徹するために、自らの生活を立て直す必要があった。

 70年、住友スリーエムに入社。最初に勤務した原価部では、全事業部の月次損益計算書の作成や棚卸帳簿の管理などを一手に引き受けていた。

 丸子社長は5年間、研磨剤製品の原価計算を担当した。経験から、数字にあまり強くないことを実感。会計士の資質に疑問を持つようになり、受験を諦める決断をした。

 次に配属された内部監査室は、重箱の隅を突くような監査で不正を暴く部署だった。当初は摘発に重点が置かれ、他部門との交流も少なかった。「暗い気持ちになった」と苦笑する。

 しかし、監査方針が「不正摘発」から「業務の効率性」へ転換した時期でもあり、気持ちを切り替えることができた。業務の無駄や在庫の低減、有効な内部統制などについて、監査と勧告を精力的に進めた。

 12年間の業務経験は、独立後の事業運営に非常に役立ったという。丸子社長は「種々の業務経験を持つことができた。大変幸運なことだった」と振り返る。

 最後の部署として経験した機能材販売部では営業として、東京三多摩地区と東北地方を担当。20カ月間で、ガラスフィルムの製品知識や市場動向などの実態を把握することができた。

 ■56歳で創業へ

 98年、退職金から捻出した資金をもとに、「サンマルコ」を東京都八王子市の自宅で企業。住友スリーエムの独立支援制度に認定されていたため、営業の決まり文句は「特約店のサンマルコの丸子です」だった。

 住友スリーエムで勤務した最後の20カ月の経験から、ガラスフィルムを主力商材とした。「製品知識と市場動向も把握していたため自信があった」と話す。

 販売戦略は最初から明確で、「既存の建物を対象とする」「提案型の営業」「地域にこだわらない」の3つ。だが、顧客開拓は並大抵ではなかった。

 会社設立当初から、事業計画書は毎年書き換えた。また、ひとつの実施したいプロジェクトがあれば、必ず個別に事業計画書を作成し、年度ごとの更新も欠かさなかった。

 設立されたばかりの「さがみはら産業創造センター」が入居者を募集しており、01年に入居が決定した。夢とリスクを持つ、起業して間もない若手経営者と異業種間交流することで、苦楽を共有できた。

 ■提案型の営業

 営業先から防犯会社を紹介され、訪問した際に防犯フィルムを提案した。誰でも貼れる防犯フィルム「スーパーポリス」を企画し、独自路線で販売。当時は中国から窃盗団が流入し、窓ガラスを割って侵入する手口が横行した時代でもあった。

 テレビや新聞は、ガラス破りを防ぐ「新防犯商品」として取り扱われ、全国に展開する大手小売業にも採用された。企画提案型営業で「部分貼り防犯フィルム」という新しい市場を開拓した。

 ガラスフィルムは多くの機能を持つ材料だ。遮熱・断熱、飛散防止、目隠し、電磁波遮へい、紫外線カットなど。「その時の市場の変化に合わせ、提案し販売していくかが重要だ。〝明るく誠実に〟の社是を目指し、社員がさらに成長し能力を高められる会社にしたい」と、丸子社長は力強く話していた。

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