日本シンクマスター、販売からレンタルへの変更が大きな転機/オリジナル浄水器の製造・レンタル


顧客第一主義を貫く公塚会長

顧客第一主義を貫く公塚会長


 ペットボトル入りの天然水、ウォーターサーバーの宅配水等、昨今、水のビジネスが隆盛だ。一種の震災特需ともいえる。

 放射性セシウム除去に高い効果を発揮する人工ゼオライト入り浄水器を製造・レンタルする日本シンクマスター(相模原市南区相模大野5の28の19、公塚益弘社長)も、その恩恵に授かっているといえなくはない。

 しかしながら、同社の浄水器ビジネスのキャリアは既に30余年。1万2000世帯以上という顧客の多くが震災前からの愛用者。数年どころか、10年、20年にわたる長期愛用者も相当数に上る。

 同社を創業したのは、昨年就任した公塚社長の父で現会長の悦弘氏。フランスベッドのトップセールスマンであった氏は、客に喜ばれ、歳をとっても続けられる事業をと1982年、大和市を拠点に浄水器の訪問販売を始めた。

 商品は、水、磁石、サーモスタット等の専門家が共同開発したオリジナル磁水器で、価格は14万8000円。

 浄水への関心が高くなかった時代だから、セールストークも難儀ではあったが、同種の大手製品価格は30?35万円。購入手続き前に1週間の試用期間を設けたことも功を奏し、比較的富裕な世帯を主要ターゲットに高い成約率をおさめた。

 85年に法人化。改良を加えながら順調に実績を伸ばしたが、90年代後半に大きな転機が訪れる。

 「ある時期から、試用期間を経ても購入を渋る客が増え始めた。零細企業がモノを売る時代は終わったと悟った」と悦弘会長は回想する。

 とはいえ、セールスでは歴戦の強者。このまま終わるわけにはいかない。

 98年、事業拠点を相模原に移し、購入ではなく業界初のレンタル方式に転換した。品質は折り紙付き。客にとって初期費用が最大のネックなのだから、そこを緩和すれば制約のハードルは下がり、末永く使ってもらえるとの考えからだ。

 強者の凄みはその徹底ぶり。従来富裕層に絞っていたターゲットを一般に広げ、客の負担感、事業運営のバランスを考えた上で、月々のレンタル費用を他社が追従できないほどの下限価格に設定。スーパーマーケットでの実演営業を積極展開し、顧客を拡大した。

 現在、用途別に5タイプの商品を用意し、営業・販売はネット1本。商品の取り付け、メンテナンスも一部を除き、ユーザー自身で行なえるシステムを確立している。

 そんな徹底的な事業の効率化、省力化を図る一方で、トラブル時は無料で即時対応するなどアフターサービスは万全。

 「良いものを他ではまねのできない価格で提供することが事業の基本。会社を大きくしようという考えはない。より利益を上げようとすれば、客を毎日泣かせることになる。喜んでもらって長い付き合いをしていきたい」と悦弘会長。

 親から子、そして孫へ。三世代にわたるユーザーも着実に増えつつある。
(矢吹 彰/2015年2月1日号掲載)

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