文盛堂、相模原発信へ多彩な活動/文化とスポーツ支援も


地域貢献に意欲を燃やす尾作さん

地域貢献に意欲を燃やす尾作さん


 「今は環境変化のスピードが速く、人の感性と能力が取り残されてしまう時代です。それだからこそ理想は高く、夢は大きく持っていたいと思います」。中央区千代田にある文盛堂代表取締役の尾作晃さん(60)は、言葉に力を込めながらこう語る。相模原で育ち明星大学で学んだあと、父親の忠さんが1957年に創業した事務用品、文具などの小売店を継承。地元密着の商売を続けながら、相模原事務用品組合理事長など経済団体の要職を歴任し、地域文化の振興を目指すボランティア活動に携わっている。その胸のうちにあるのは、相模原の発展を願う熱い思いだ。(編集委員・戸塚忠良/2014年7月1日号掲載)

 ■お店大賞受賞

 文具からIT関連機器、業務用ソフト産業機器まで幅広い品揃えで定評のある文盛堂は長い間、地域の人たちに親しまれている。「よそに無いものを売ろうと考えながら経営しています。脱コンビニ、脱100円ショップです」と尾作さん。定番商品は欠かさないが、新商材の導入に力を入れており、商品の中には自分と社員のアイデアを生かした開発品もあるという。
 「経営者には発想を変える、発想をジャンプする努力が求められていると思います」というのが尾作さんの経営信条だ。
 2009年に相模原文化お店大賞、10年に県優良小売店舗表彰を受賞した。「大賞受賞店のマップ作りやスタンプラリーを考えてもいいと思います。大賞への消費者の関心が深まり、商業者、サービス業者のやる気を掘り起こす効果が期待できるのではないでしょうか」とのアイデアも披露する。

 ■映画に参画

 その一方、「発想の転換と新たな創造への挑戦は、店舗の経営だけでなく、地域発展のキーワードでもあると思います」と話す尾作さんは、経営だけでなく相模原を発信するいろいろな文化プログラムに参画している。
 その一つが、映画でシティセールスしようというグループ「相模原は映画のまち」の代表としての活動。「市の文化力を高め、相模原の名と地域資源を多くの人に知ってほしい」との思いを形にするため、相模の大凧の保存活動を盛り込んだ作品や市内が主なロケ地となった作品の制作を支援し、上映会や出演者のトークイベントの準備にも奔走している。
 これまで同会が制作に協力した作品は、子宮頸がんをテーマにした『ミセスインガを知っていますか』(安田美沙子主演)、相模台商店街でロケし大杉漣の演技が好評だった『棚の隅』、名優蟹江敬三さんが他界する直前に主演した『MAZE』、障害を持つ教師と生徒の心の交流を描く『機関車先生』(坂口憲二主演)。いずれも話題性に富む作品だ。
目下、「市の60周年を記念する映画をオール市内ロケで作りたい」という構想を温めている。
 
 ■画家と連携

 市の文化力を高めたいという思いは強く、優れたアマチュア画家山本悟さんとコラボした活動も続けている。
 「山本さんはカヤバ工業の社長を務めた人。南区麻溝台にある相模原工場の工場長の頃に面識を得て、とても優れた画家であることを知りました。相模原にはこういう素晴らしい産業人がいるのだということを多くの人に知ってほしいと思ったのです」と、尾作さんは個展開催と市への作品寄贈をお膳立てした動機を話す。レプリカの販売とチャリティ募金も行い、5年目の昨年、市長表彰を受けた。
 スポーツ分野での支援活動にも積極的。なかでも相模原ラグビーフットボール協会の理事として、市民のラグビーフットボールへの関心を高めてもらうプラン作成などに力を注いでいる。「スポーツの面から相模原を全国に発信するためのお手伝いをしたい」という気持ちがあるからだ。

 ■異業種交流

 地域産業界の交流・親睦団体でも役員としての活動を重ねている。代表幹事を務める異業種交流グループ「メンバーズ21」では地域の幅広い人材との自由闊達な意見と情報交換を行い、相模原法人会では理事として最先端のビジネスセミナーなどに率先して参加している。
 個人としては、城を見て歩くのが昔からの趣味。三味線にも造詣がある。5年前から茶道も習い始めた。江戸時代の肥前平戸藩に伝わる鎮信流だ。
 会社では「人格の差は苦労の差、実力の差は努力の差」を座右の銘として掲げ、社員との一体感を大切にしている。自身も若い頃に自宅が火事で類焼する不運に見舞われた経験があるからこその人生訓であり社訓と言えよう。
 「店としてエコキャップ回収や毎月1回の地域清掃といった、小さな地域貢献活動はしていますが、いちばん大切なのは、事業を続けることだと思います。企業は継続しているだけで社会貢献しているのではないでしょうか。市内で55年続けてきたこの店を息子に引き継ぐのも経営者としての私の大きな責務だと考えています」という尾作さん。
 3代目となる息子への事業継承の準備も進めつつ、「まだまだやりたいこと、やらなければならないことがたくさんあります。これからも地域のために役立ちたいという思いを支えに、毎日を過ごしたいですね」と、笑顔あふれる表情で語る。

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