クロコアートファクトリー、目指すは自社オリジナルのライトウエイトスポーツカー/カーデザイン・ロートアイアン


自社製スポーツカー開発を目指す徳田社長

自社製スポーツカー開発を目指す徳田社長


車で信号待ちの際、気がつけば前後、対向ともハイブリッド車(HV)などという光景が珍しくなくなった。

 昨年1年間に国内で販売された新車の17%がHV。本田技研では、今年1~3月の新規登録車の49%がHVだという。

 HVや電気自動車等のエコカーは国策に合致した省エネ時代の旗手。否定する理由はないが、正直なところ、適度な騒音、振動を伴う野性味、個性豊かなフォルムを持たないエコカーは、趣味、芸術性においてはなんともつまらないのである。
 「レシプロエンジンを搭載した自社オリジナルのライトウエイトスポーツを作りたい」

 自社で開発したけん引免許不要の小型トレーラーが相模原市トライアル発注制度の2012年度認定製品になるなど、ユニークなものづくりを展開するクロコアートファクトリー(相模原市緑区根小屋2539-1)の徳田吉泰社長は、エコ一辺倒のモータリゼーションに一石を投じる遊び心いっぱいの事業計画をじっくり温めている。

 多摩美術大学で彫刻を専攻したが、車が大好きで、卒業後はカーデザインの道へ。本田技研で10年ほど、モデリングやデザインに携わった。

 仕事の内容や待遇に特段不満はないものの、サラリーマンとして先が見える状況が嫌だった。本田を退社後、メルセデス・ベンツ社で1年間、モデリング等に携わりながら独立の準備を進め、1996年に創業した。

 さしあたり運転資金確保のため、メーカーからショーモデル等のデザインを積極的に受注。ただ、この手の仕事は手間がかかる上に急かされるのが常で、仕事に追われるだけの日々が続いた。

 そんな状況を打開すべく00年に始めたのが、彫刻学科出の経歴、技術を生かしたロートアイアン(鍛鉄手工芸)による建材や工芸品等の製作・販売だ。フックやハンドル、表札、門扉、柵、郵便受け、ドア、面格子、窓枠、手すり、家具など、いずれもフルオーダーの一品ものとして受注。10年には横浜の元町にショールーム、販売窓口となるショップをオープンした。

 その一方、カーデザイン事業での自社製品として開発し、2年前に販売を開始したのが、冒頭の小型トレーラー「ルーメット」。強化プラスチック製の愛嬌あるボディは一見、巨大な玩具のようだが、国土交通省の認証取得済みで、移動販売やキャンピングカー等多目的に利用できる。

 これら自社製品事業が軌道に乗ってきたことで、ライトウエイトスポーツ構想が夢から現実のものになりつつある。

 「根底にあるのは、自分が心の底から求めている車が世にないから、作りたいという思い。エンジンブロックだけは既存のメーカー製を流用し、それ以外は自社開発。庶民でも頑張れば手が届くような価格にしたい」
 課題は多大な開発費用と衝撃テスト等の厳しい壁だが、設計・開発に向けた経験と技術、そして情熱は既に揃っている。(矢吹 彰/2014年4月20日号掲載)

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