大器機工、諏訪を礎に店売りを開始。製造業の国内回帰を力強く後方支援/産業機械・工具等の販売


諏訪の店売りで製造病を支援する森田社長

諏訪の店売りで製造業を支援する森田社長


 ものづくり―本来辞書にもないこの言葉が、国家の未来を左右する標語のようになって久しい。

 トヨタ自動車の連結純利益が過去最高を更新する見込みとされ、大企業の業績が軒並み復調している状況下でも、標語の重要性は変わらない。いや、高まっている感さえある。それほどまでに国内の製造業は疲弊しているのだ。

 そんな中、大器機工(綾瀬市深谷南1-5-1、森田明社長)は、地域最大の品揃えを誇る機械・工具類の店頭販売を通して製造業の国内回帰を力強く後方支援している。

 同社は1975年、森田社長の叔父・正夫氏が藤沢市内で創業。4年ほど前までは、顧客の工場へ赴いての訪問販売のみだった。

 しかしバブル崩壊後、長引く景気停滞と製造業の国外移転が進み、顧客共々たどり始めた斜陽の道を引き返すことが難しくなっていった。

 苦境を脱するために同業者の多くはネット通販に参入したが、むしろ状況を悪化させた。

 「価格競争が激化した結果、シェアの大半を一部の流通業者に食われ、斜陽化に拍車をかけた。実は私も迷ったが、結果的にやらなくてよかった」

 こう振り返る森田社長が選んだ道が店売りだった。優れた人材を介して顧客との信頼関係を構築しながら迅速な納期と在庫の流動化を両立させるには、かつての工具商のように店舗を営むのが最適と考えたからだ。

 10年ほど前から漠然と思い描いていたアイデアを社長就任3年目の2010年に実行に移した。

 「こんな言い方は何だが、競売の入札締め切り3日前にこの店舗用地の存在を知り、銀行に融資を要請。次点とわずか数10万円の差で落札した。ビジネスの神様が自分をサポートしてくれていると思った」と森田社長は真顔で話す。

 実際、各地で中小企業が次々と工場をたたみ、販売市場としてのパイがしぼむ中で、店舗事業を始めて以降、同社の業績は上向きに転じ、今もそれを維持し続けている。

 もちろん、その礎となっているのは創業時からの訪問販売。現在11名の営業スタッフが分担して、大手10社、中小約100社の得意先のサポートに努めている。

 一方、近年の欧米では、新興国の人件費高騰等を要因とする製造業の国内回帰が増えつつある。それが日本を含めた世界的潮流となるか否かはまだ予断を許さないが、やみくもに急進展してきたグローバル化の流れが何らかの転換期を迎えているとの見方もある。

 「グローバル化では国民全員が食べていけない。近年、ものづくりの素晴らしさに気づく若者も増えており、志ある人が身近にいれば全面的に応援したい。企業も日本的経営に戻ったほうがいい」

 人類は道具の発明と使いこなす技術の修練により進化してきた。つまり、ものづくりが未来を切り開いてきたのだ。志ある者が店に集まれば、地域復興の起点にもなり得る。(矢吹 彰/2014年3月1日号掲載)

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