コスモプリント、下請けに徹し 顧客本位の姿勢と高品質で活路を切り開く/各種印刷・製本・加工


「今後も下請けに徹していく」と山本社長

「今後も下請けに徹していく」と山本社長


 アベノミクスで好況にある大企業とは裏腹に、それを下支えしながらアップアップという中小企業も少なくない。あらゆる業界で、「下請け」であることにプライドを持ちにくい時代である。

 「下請けは格好悪い、恥ずかしいと卑下する向きもあるが、下請けだからこそ、ある種の特化した分野で技術を磨き付加価値を高められる。うちはこれまでも、そしてこれからも下請けに徹していく」

 名刺、封筒、チラシ、パンフレット、ポスター、冊子、DMなど、主に紙媒体の多種多様な印刷を手掛けるコスモプリント(相模原市南区大野台4-1-58)の山本有司社長は力強くこう宣言する。

 同社は1989年、前社長の中根茂氏が下溝で創業。当初は名刺印刷のみだったが、後に前記した多様な印刷物へと手を広げていった。

 実は、山本社長は10年ほど前まで同社に発注する側として、町田市内で印刷データやデザイン制作を手掛ける小さな事業所を営んでいた。中根氏から後継者探しの相談を持ちかけられ、2004年に自社を畳んで従業員とともに合流。3年間、新たな組織で営業のキャリアを積み、06年に代表権の譲渡を受け二代目社長に就任した。

 顧客は現在、相模原、座間、厚木、平塚、伊勢原、町田、八王子各市内に所在する印刷業、印刷データ及びデザイン制作業、広告代理店など約300社。下請けに徹する以上、印刷物の依頼元である企業や店舗、一般消費者等に自ら営業をかけるわけにはいかない。

 「だからこそ全幅の信頼を持って発注してもらえる。多くはないが、直接取引を紹介してもらえることもある」と山本社長は話す。

 09年に新設したSia神奈川の本社工場には、CTP(製版なしに直接刷版出力を可能にする印刷工程)機器や印刷機、製本・加工機など最新鋭の設備を調え、新聞折り込みチラシのような大量ロットもの以外、あらゆる印刷物に高効率・高品質で対応できる。
 低価格を売りにしたネット通販印刷の台頭も著しいが、価格競争の土俵に乗る気はない。自社の規格・条件に合わせた注文を募るのではなく、客本位のオーダーにきめ細かく対応するのが同社のスタイル。近年、そういうニーズは少しずつ増える傾向にあるという。

 「技術で勝負」という意識は17名の社員間でもしっかり共有。ともすれば3Kになりがちな仕事だけに、個々の社員には自身の専門以外にも代役を務められる工程を複数持つよう指導し、有給や代休を取りやすくするなど、職場環境の向上に努めている。

 電子書籍の制作や大学等の学会報告書や予稿等の管理・印刷など、ニッチな新事業にも積極的に取り組んでおり、下請けでありながら「他社がやりたがらない手間のかかる仕事を率先して受ける」というサービス姿勢こそはある意味、同社のオリジナル商品といえる。(矢吹 彰/2014年2月20日号掲載)

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