市村塗装、価格競争に動じず、高い技術力と信頼で勝負する/外壁 屋根等の建築塗装


「自社施工を基本に技術力で勝負」と市村社長

「自社施工を基本に技術力で勝負」と市村社長


 4月から消費税が8%に引き上げられる。その公式発表がなされた昨年10月以降、耐久消費財関連を主体に、駆け込み需要の恩恵に授かっている企業は少なくない。
 「10月から業界全体が忙しいようだ。人を増やしたいと募集をかけているが集まらない」
 住宅や工場の外壁、屋根など建築塗装を手掛ける市村塗装(相模原市緑区大島1744-6)の市村努社長はこう話す。
 同社は1981年に、市村社長の父・孝雄氏が創業。それまで建機の塗装に携わっていた同氏だが、独立を機に業態を改めた。以来、総勢4、5人規模の小所帯で、主に戸建て住宅や工場の外壁、屋根の塗り替えを主業としてきた。
 そこそこ景気の影響は受けるものの、需要が突然途絶えてしまうような業種ではない。就職氷河期の最中、96年に家業に入った市村社長だが、90年代も総じて事業は安定していたという。
 ところがここ10年ほど前から、経営状況が徐々に厳しくなってきた。
 相模原市はもとより、神奈川県内や多摩周辺には70~80年代からベッドタウンとして発展してきた地域が多く、築20~40年を経た住宅のリフォームに伴う外壁、屋根の塗り替え需要にはことかかないはずだ。それなのに、同社が受ける仕事は減り、単価は下がる一方。
 リフォーム事業の隆盛とともに異業種からの新規参入が相次ぎ、過当競争、価格競争の波にさらされるようになったのである。
 2009年、経営が厳しい状況の中で事業を承継した市村社長が真っ先に手掛けたのが営業活動だ。インターネットのホームページ、ブログを起ち上げ、チラシを作成して事業所や仕事先の周辺に配布して回った。
 「それまで30年近くの間、営業など全くやってこなかった会社だが、経営を引き継いで、親父の時代は良かったなどと恨み言を言ってもはじまらない」
 そんな気概が実り、一昨年度に取り戻した黒字決算は今期も継続中。そんな中で発生した今回の駆け込み需要である。
 もちろん、この特需を否定することはない。しかし、4月以降に予測される反動を案ずる経営者は市村社長だけではあるまい。そのためにも、経営基盤のさらなる強化が急がれるところだ。
 同社では今後も、戸建て住宅のリフォームに準じた外壁等の塗り替えを基幹事業とした上で、他社への対抗策として価格を引き下げるようなことは考えていないという。厳しい競争の中で生き残るには、むしろ技術力と信頼性こそが重要ととらえ、その向上に取り組んでいる。
 「あくまで自社施工を基本とし、社員には塗装技能士の資格をとるよう勧めている。自らの技術に自信を持ち、自ら責任を負うことで、価格より技術で勝負する塗装の専門業者としての信用を高め、広めていきたい」と市村社長。
 真価が問われる時代。妥協のない姿勢に期待したい。(矢吹 彰/2014年1月20日号掲載)

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