【相模原市】都計審、相模大野立駐を計画廃止/交通広場と存続し月極利用も検討へ


相模原市は10日、相模原都市計画駐車場としての「5号相模大野自動車駐車場(相模大野立体駐車場)」(地上5階、地下1階、収容台数830台)を廃止する変更案など3議案を諮問した第228回都市計画審議会を開き、同駐車場を廃止とした。相模大野地区で駐車場供給が上回っており、同駐車場を廃止しても充足しているため。駐車場自体は路外駐車場として存続し、1階の交通広場も継続利用する方針だ。月極駐車場としての供用も検討する。【2024年5月20日号掲載】

都市計画駐車場としては廃止となる相模大野立駐=本紙撮影

都市計画駐車場としては廃止となる相模大野立駐=本紙撮影



1987年頃の相模大野駅周辺では、駐車用量不足や路上駐車が課題となり、同年3月に自動車交通の混雑解消のために約30・5㌶を駐車場整備地区に定めた。同時に相模大野立体駐車場を総合都市交通体系の観点から整備の必要性が高く永続的に確保すべき交通施設として都市計画決定し、88年11月に市初の市営自動車駐車場として同駐車場の供用を開始した。

相模大野地区は同駐車場のほか、相模大野駅北口地下駐車場(地下3層、212台)と相模大野駅西側自動車駐車場(地上9階、500台)の都市計画駐車場が整備され、大型施設に駐車場設置を義務付け、駐車問題はおおむね解消された。

一方、人口減少や超高齢社会、交通手段の変容などにより駐車場を取り巻く環境が変化し、将来の駐車需要(1454台)に対し供給(受給率2・18)が上回ると試算している。2019年9月の伊勢丹相模原店閉店に伴い利用者が減少しているため、相模大野駅周辺の駐車需要や稼働率などを踏まえて検証を行った結果、相模大野立体駐車場の都市計画駐車場としての位置づけを見直す。

相模大野自動車駐車場の年間利用台数は、供用後2年目の1989年は約7万台だったが、伊勢丹相模原店が開業した翌90年には約35万台に急増。11月に相模大野ステーションスクエアが開業した96年にはピークの約72万台に達した。民間の時間貸し駐車場や駐車場付きの施設が整備されたことに加え、伊勢丹相模原店閉店や翌年から始まったコロナ禍の影響などで、2020年以降は約8万台前後に落ち込んでいる。

都市計画は、決定当時と計画決定の必要性を判断した状況から大きく変化した場合、都市計画駐車場などの必要性や配置の検証を行い、変更や廃止などの見直しを図ることができる。

現在、橋本駅、JR相模原駅、小田急相模大野駅、同相模原駅の周辺に6つの市営駐車場を設置している。近年、カーシェアリングの普及や免許返納者の増加など、人々の意識や生活の変化などによって、駐車需要は減少傾向にあるという。

市内の駐車場整備に関する基本方針や施策、市営自動車駐車場の中長期的な運営の見直し方針を示すため、市は2023年11月に「市駐車場ビジョン」を策定。充足させる整備から質的な整備に転換することで、多様な駐車需要に応え、環境問題やバリアフリーなどにも配慮した整備を目指す。建築物の駐車場付置義務条例の見直しや荷さばき場への転用などを想定したプランも設けた。

将来にわたっての駐車場を確保する目的がある都市計画駐車場では、不特定多数が駐車できる駐車場(都市施設)として決定されるため、月極駐車場としての利用ができない。都市計画が廃止となることで、従来通りの来街者の利用に加え、周辺の企業や住民のための駐車場としても活用する。

審議会当日、同駐車場を利用していた70代の夫婦は、本紙の取材に「伊勢丹は閉店してしまったが、駅前に行きつけの喫茶店があり、駐車場もよく利用する」「老朽化が激しいので廃止を心配している。規模は小さくてもいいので、建て替えてくれたら」などと話した。

審議会は、各分野の学識者や市農業協同組合会長、相模原商工会議所専務理事、県宅地建物取引業協会、市議会議員、関東地方整備局局長、県警本部交通部長、市自治会連合会会長に公募委員を加えた計20人。会長に明星大建築学部の西浦定継教授、副会長に東海大建築都市学部の梶田佳孝教授が就任した。

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