【2024年公示地価】相模原緑区は橋本と津久井で格差拡大/交通利便性向上し大和市住宅地上昇


国土交通省が3月26日に発表した2024年公示地価で、相模原市全体において住宅地、商業地、工業地の全用途で、平均変動率が3年連続で上昇した。リニア中央新幹線新駅が設置される橋本駅周辺でも商業地の上昇率が約10%を超える地点があったが、県内の上昇率順でトップ10入りした地点はなかった。緑区の中山間地域では住宅地と商業地で下落に歯止めがかからず、同じ市内でも地域によって明暗が分かれた。大和市では、直通線の開業などで利便性が高まり、小田急・相鉄の2社が乗り入れる大和駅の徒歩圏内で住宅地2地点の上昇率が急上昇している。【2024年4月1日号掲載】

 □相模原橋本は頭打ち

商業地では相模原市の平均変動率が5・7%(前年3・0%)と上昇率が拡大した。上昇率を区ごとに見ると、緑区4・4%(同3・1%)、中央区7・0%(同3・3%)、南区5・4%(同2・6%)とそれぞれ上昇した。個別の地点では、橋本駅南口から国道16号方面へ約350㍍の「橋本2丁目―10―24」が10・6%(同10・3%)にわずかに進展はみられたが、上昇率順上位入りを逃した。

商業地「橋本2丁目10ー24」の地点

上昇率10.6%の商業地「橋本2丁目10ー24」



同区では一方で、国道20号の相模湖駅前交差点から藤野方面に約50㍍の「与瀬本町8番1」は、マイナス0・7%(同マイナス1・3%)と下落率を縮小したものの、下落率で県内ワースト1位となった。周辺地域は人口減少が進行し、駅前観光地に位置するものの繁華性は高くないことが原因とみられる。

旧津久井町中心地を通る県道鳥屋川尻線沿いの「中野字中村302番1」(橋本駅から8・9㌔)の地点が同じくマイナス1・3%で、ほか18地点とともにワースト6位となった。繁華性が劣る中野地区の旧道沿いの近隣商業地域。圏内の多くは人口減少、高齢化が進展し、郊外型店舗への顧客流出などもあって繁華性が低下し、出店需要は弱い。

橋本駅周辺地区は、橋本駅の周辺居住者、駅利用者を対象とする近隣商業地域であるが、将来のリニア新駅設置や開発に対する期待を織り込んだ潜在需要は強い。駅に近く平坦で、上層階を共同住宅として使用することが可能な地域では、おう盛な住宅需要を背景に継続して上昇傾向にある。

県央地域では、小田急本厚木駅(厚木市)北口駅前広場に接面する「中町2丁目939番外」が10・4%(同9・5%)の上昇。周辺再開発などによる発展的気運、客足の流れによる収益性を反映した需要が高い。このほか、海老名市4・7%(同2・5%)、座間市5・4(同2・2%)、大和市5・8(同1・8%)とそれぞれ上昇傾向を示した。

 □大和は2地点上位に

住宅地では、大和市全体で4・8%(同2・2%)となった。これまでも交通利便性が高かったところに、相鉄・東急直通線の開業により東京方面や新横浜駅へのアクセスが容易になり、大和駅徒歩圏で高い上昇率を示した。同駅から約700㍍(徒歩10分)の「深見台2―5―3」が9・7%(同3・8%)となり上昇率順で6位(前回99位)、「深見4―3―5」が9・4%(同3・7%)9位(同108位)とそれぞれ急上昇した。

大和市位置図
相模原市では、都内との価格差や人口増加などを背景に、交通利便性が高い住宅地域を中心に需要が堅調で、市全体で4・0(同1・9%)と上昇率が拡大。緑区3・3%(同2・0%)、中央区4・3%(同1・8%)、南区4・3%(1・9%)とそれぞれ上昇。ことしは、市内の地点で上昇率順上位はなかった。

橋本駅周辺では、交通利便性が高いことによる旺盛な需要に加え、リニア中央新幹線の事業進捗による発展的期待感から、上昇が継続している。市内の横浜線各駅においては、駅周辺部の価格上昇がバス圏にも波及し、地価の上昇が見られた。

JR相模湖駅から約4㌔離れた「千木良字柳馬場431番1」は、地区内に居住の一時取得者で周辺市域からの転入者は少ない。市内中心部への交通利便性と生活利便性は劣る。マイナス0・7%(同マイナス2・6%)と下落がやや弱まったが、下落順位がワースト9位(前回10位)となった。

 □物流需要で県央堅調

工業地では、厚木市内の「緑ケ丘5―1―2」(オーマイ厚木工場)が14・8%(同14・0%)で3位(同1位)になった。相模原市内は上昇率上位には入らなかったが南区が7・9%(同6・9%)、緑区が5・8%(同6・0%)、中央区5・2%(同3・5%)の上昇となり、全体で5・7%(同4・5%)となる堅調ぶりが続く。

通信販売市場の拡大により、物流適地は需要の増加が続いており、大幅な地価の上昇を見せている。消費地のごく近くに置かれる中小規模の倉庫用地でも需要が増加している。製造業が多い工業地でも需要が見られ、地価は上昇傾向となっている。

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