相模原市の人権条例、本会議で原案通り可決/怒号飛ぶ傍聴席 退場命令も


相模原市が4月から施行を目指していた「人権尊重のまちづくり条例」案について、市議会は19日の3月定例本会議で、賛成多数で原案通り可決した。これにより同条例は4月1日から施行される。「市人権施策審議会がまとめた答申と条例案の内容が異なる」として、傍聴席には条例案に反対する市民らが詰めかけ、怒号や野次が飛び、古内明議長が傍聴人に退場命令を出し、議事が一時中断する異例の事態となった。【2024年3月20日号掲載】

報道陣からの取材や議論に対応する本村市長

報道陣からの取材“など”に対応する本村市長



本村賢太郎市長は本会議後、取材陣に対して「人権の課題に対しては非常に意見や考えが多岐にわたっていると感じた。まずは市民に条例を知っていただき、改正すべきところは改正していきたい」と述べた。

本会議では、前日18日に条例制定を答申した市人権施策審議会の委員らが「答申の根幹を無視した」と市を批判し、委員2人が辞任届を提出した報道を受け、長谷川くみ子市議(颯爽)は「委員会で議案が審査された状況とは変わった。議案を委員会に再付託し継続審査とすること」を求めたが、賛成少数で否決された。

討論では、共産と颯爽が反対。羽生田学市議(共産)は「市は答申を最大限に尊重したと答えているが、どこをどうすればこの条例案になるのか」と反対した。

自民、さがみみらい、公明、立民、維新、無所属は賛成の討論。小林孝康市議(無所属)は「市民の分断をあおるかのように、罰則の有無が取り上げられているが、規制や罰則ではなく、啓発や教育によって社会を変えていくことを重視すべき」と賛成した。

谷川洋市議(さがみみらい)は「行政が強制力を持つ制度を設置する際は、憲法を念頭に置くべき。審議会の答申を踏まえ、施策を実施した責務は市が負う。規制する事実をはじめ市内の現状を把握し、行政として可能な範囲のギリギリの内容の条例案」と賛成した。

採決では古内議長を除く自民(13)、さがみみらい(9)、公明(8)、立民(5)、維新(4)、無所属(1)の計40人が賛成。颯爽(3)と共産(2)の計5人が反対した。

同条例を巡っては2023年3月、市人権施策審議会がまとめた答申は、「ヘイトスピーチを規制し、著しく悪質なものは罰則で対処する」という内容だった。同年11月に市議全員が出席する全員協議会で、市が公表した条例案骨子は「差別的言動(ヘイトスピーチ)に対する罰則規定」は含まれなかった。

答申を作成した審議会の前委員の有志7人は24年2月、「審議会の答申内容を退けた理由」などを尋ねる公開質問状を本村市長宛てに提出していた。市は14日付けで、公開質問状に対する回答文書を送付。市は顧問弁護士や行政法学者による意見徴収などを回答として示したが、委員2人が18日付けで辞任した。

条例案では禁止規定を設けたのは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に限定。市長は勧告や禁止命令、従わなければ氏名を公表できる。刑事罰などの罰則規定は設けていない。

「障害者に対する不当な差別的言動」については、市長が「拡散を防止するために必要な措置を講じる」と記すにとどめた。インターネットでの書き込みや、印刷物などが「拡散する表現行為」にあたる。

市議会の市民環境経済委員会で4日、同条例案が審議され原案通り賛成多数で可決されていた。同委員会の仁科なつ美副委員長(立民)は「不当な差別的言動行為の禁止措置に本邦外出身者は含まれるが、障害者はなぜ含まれないのか」と質問。市は「憲法の『表現の自由』を制約することになるので、実際に市内であった事例を把握し判断した」と説明。

条例の必要性や正当性を裏付ける立法事実について、市は「やまゆり園事件は殺人事件であり、条例の禁止措置である公共の場での拡声器などを使用した不当な差別的言動に該当するものではないため、禁止措置の立法事実とするのは難しい」と答弁している。

「立法事実」が論点となる。条例の必要性や正当性を裏付ける社会的な事実を指す。市内の不当な差別的言動について市が23年5月に行った調査によると、「(出身国・地域を理由とした)不当な差別に該当する可能性が高いものとして街宣活動、インターネット上での事案、その他疑義がある事案がある」としている。「障害者に対する差別的言動」はインターネットの書き込みなどを確認したため、市は拡散防止に必要な措置を講ずるとした。

市は立法事実が市内で確認できなければ、条例が憲法に違反する可能性があると判断している。

下記2次元バーコード、URLから、本会議後の本村市長の取材会見をノーカットで視聴できる。

https://www.youtube.com/watch?v=9hKWGhrcWGw

人権条例QR

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。