相模原商議所副会頭・原幹朗氏、観光資源を主役にした鳥観図/「山や川に境界はない」 自治体超えた広域観光を


広域観光を実現するため、奥相模の山や川などの観光資源を描いた鳥観図(ちょうかんず)「奥さがみ道志・桂川 散策絵図」。観光振興に尽力する相模原商工会議所副会頭で北辰企業社長の原幹朗さん(75)が構想から3年ほどかけて自費で企画制作し、このほど完成し相模原市の本村賢太郎市長に寄贈した。原さんは「この鳥観図が独り歩きしてくれて、広域観光の実現につながればうれしい」と期待している。【2024年2月10日号掲載】

 

 ■構想のきっかけ

奥相模は旧津久井郡4町の地域。鳥観図とは上空から鳥が見下ろしたように描いた地図のこと。富士五湖の1つで相模川の源流である山梨県の山中湖から発する桂川流域、同県道志村の水源の森から発する道志川流域を中心に津久井湖周辺まで1枚の立体的な絵地図として描かれている。

鳥観図_1
原さんが絵地図の構想を抱いたのは2021年。東京五輪が開催され、同市も自転車ロードレースのコースとなった。東京都府中市からスタートし、神奈川、山梨、ゴールの静岡県駿東郡の富士スピードウェイまで一都3県にまたがったが、各自治体が制作したコースマップは、各自治体内のみを掲載したものが大半で、自治体の境界でマップが分断されていた。

原さんは「山や川に境界線はない。広域観光の視点が必要だった。コロナ禍で無観客だったこともあり、せっかく東京から富士山までの観光資源の魅力を世界に発信するチャンスだっただけに残念だった」と振り返る。

こうして生まれたのが、原さんの絵地図。東京都の高尾山周辺や神奈川県の奥相模、山梨県の山中湖にいたるまで5市4町4村が、桂川と道志川を中心に描かれている。「一番悩んだのが、地図の区域であるゾーニングだった」と原さん。

参考にしたのが、幕末・明治期に英国公使間で通訳、日本語書記官として日本に滞在したアーネスト・サトウの『日本旅行日記』。日記には、小仏峠辺りから桂川流域を上流し、山中湖からは今度は道志川流域を下ったという記載があった。地図の区域は、ここから着想を得たという。

 ■制作に約1年半

原さんは、著名な鳥観絵地図師である村松昭さんに自費で制作を依頼。村松さんは土地に息づく生き物や、歴史伝承を盛り込みながら絵地図を書くのが特徴。各地域の地形や名所旧跡を把握するため、1年半ほど原さんは村松さんと各地を歩いて回った。

鳥観図_3
「絵地図はデジタルデータではないので、修正がきかない一発勝負。丹沢の権現山のほうき杉を書いてほしいと頼めば、実物を見てみたいと言われ一緒に回った」と原さん。絵地図には、ヤマセミやコノハズク、カモシカなどの動物、丹沢アンパンや久保田酒造、ユズなどの特産品、舞鶴姫伝説や串川姫伝説など地元市民でも多くが知らない歴史伝承なども描かれている。同市緑区の「中山間地域の振興」も制作の目的の1つだったという。見ているだけでワクワクする、散策してみたくなるような魅力ある絵地図に仕上がっている。

 ■広域観光の重要性

原さんは「自然や歴史など観光資源を主役にした鳥観図を目指した。相模原に観光のストロングポイントはないかもしれないが、各地域の特色を組み合わせ、ゾーニングすることで魅力ある観光資源となれる」「今後はトレッキングやキャンプ、サイクリングの専門家、地元に暮らす地域の人々も含め、自治体の枠を超えた広域観光を中長期的に考えていきたい。この鳥観図がこのきっかけになれば」と語った。

「奥さがみ道志・桂川 散策絵図」は一部を相模原市に寄贈。市内の有隣堂ミウィ橋本店(緑区橋本)、中村書店(中央区上溝)、くまざわ書店相模大野店(南区相模大野)で販売している。税込み1540円。

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