相模原市のふるさと納税、寄付額は5年で15倍/人気返礼品は「シャンプー」


2023年の「ふるさと納税」の申し込み期限が12月末までと迫ってきた。ふるさと納税の申し込み期間は1月から12月までで、年末に駆け込み需要によりピークを迎える。全国の自治体がしのぎを削る中、果たして相模市の人気の返礼品とは、寄附金額はどれほどなのか。同市のふるさと納税の実態について取材した。【2023年12月13日号掲載】

ふるさと納税ランキング
「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意志で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として08年に創設されたふるさと納税。年収や家族構成を基に定められた寄附金額の上限以内なら、2千円の自己負担を差し引いた分が住民税や所得税から控除される。住民票のある自治体(納税先)に返礼品を希望するふるさと納税はできない。

相模原市は16年12月から、「暮らし潤いさがみはら寄附金」に「地方創生さがみはら地域活性化応援コース」を設け、このコースに寄附した「市外在住の人」に返礼品を贈呈している。同市の返礼品は地元食材を使用した食料品、市内企業の工業製品・工芸品、市内での体験コースなど、現在400種類以上を揃える。寄附金額は1~3万円の価格帯が人気だという。

市観光・シティプロモーション課によると、同市の返礼品の寄附件数ランキング(23年4月1日から9月30日時点)の第1位は「ユニリーバジャパン商品24品目」(3千105件)。シャンプーやボディソープなどがトップに入った。これはユニリーバの相模原工場(南区大野台)がラックスやダブのシャンプーなどの国内流通の大部分を生産しているため。サイトの口コミでは「毎日使う日用品なので、選べて助かる」「相模原市にユニリーバの工場があることを知らなかった」などの意見があった。

第2位は小川和男養鶏場(中央区田名)の「おがわのたまご」(1千533件)。1915(大正4)年創業の100年を超える老舗養鶏場の卵がランクインした。

第3位は東プレ(中央区南橋本)の「コンピューターキーボード・マウス」(1千264件)。IT企業などで使用されているプロ用のキーボードで、長時間のタイピングでも指が疲れにくい静電容量無接点スイッチを採用、押し心地が滑らかなのも特徴。金額も高く、返礼品として採用された際には話題となった。

第4位はタイヨー印刷(中央区上溝)の「アイドルマスター・ミリオンライブ!と相模原市のオリジナルコラボグッズのアクリルスタンド(3種類)」(254件)。組み立てると、アイドルたちが相模原から空と宇宙に飛び出したような立体的なデザインを楽しめる。アニメ好きのハートを掴んだ返礼品といえる。

第5位は田中養鶏場(南区麻溝台)の「プリマスロックの卵」(122件)。プリマスロック(交配種)という鶏で、海藻や緑茶、カキガラなどをエサに使用している。

同市の返礼品の特徴について、市の担当者によると「市内に養鶏場が集まる『たまご街道(南区麻溝台)』があり、近年、鶏卵が高騰し品薄になったことも影響しているのではないか」と話した。また、申し込み者の地域性は特になく「まんべんなく」だという。

市の担当者に「注目の返礼品」について尋ねると、「鉄道模型」と返ってきた。ふるさと納税サイト「ふるさとパレット」のみの取り扱いだが、グリーンマックス(中央区宮下)が製造する鉄道模型(Nゲージ)で、金額は10万円前後。「返礼品で鉄道模型を扱っている自治体はほぼない」(同)という。

同市の返礼品は、キーボードやフィギュアなど特殊な品のほかは、消耗品や日用食材の購入に返礼品が利用されているというのが実態のようだ。

同市のふるさと納税(返礼品あり)の寄附金額は17年に約2千400万円だったが、22年には約3億8千万円まで15倍に急伸した。21年に急増したのは、「東プレのキーボードが返礼品となった影響が大きい」(同)という。

市財政課によると、返礼品ありと返礼品なしを合わせた同市の個人の寄附金額の合計は22年度で約9億円。一方で、市民がふるさと納税を行ったことで控除として市外に流出した市税は、同年度で約24億円。しかし、地方交付税の交付団体の場合、ふるさと納税による減収額の75%が、地方交付税により国から補てんされる。

地方交付税交付団体である同市の場合、減収額約24億円の75%の約18億円が国から交付される。交付税約18億円と寄附金額約9億円を足して約27億円。減収額は約24億円なので、22年度は差し引き約3億円の黒字となっている。

相模原市や横浜市は地方交付税の交付団体であるため、流出分の75%は国から補てんされるが、東京都や23特別区、川崎市は不交付団体であるため、流出分はそのまま減収となり、財源流失は深刻な問題となっている。

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