神奈川県地価調査、相模原市内で住商工上昇/緑区内は橋本と旧津久井で格差拡大


県が9月19日に公表した2023年(令和5)年地価調査(7月1日調査)では、相模原市全体の住宅地と商業地で平均変動率が3年連続で上昇した。特に橋本駅南口の商業地が始発ターミナル駅としての利便性に加え、リニア中央新幹線建設の進ちょくによる発展的期待感などを受けて大きく上昇。一方、旧津久井郡では、相模湖地域の与瀬が商業地でワースト1位、津久井地域の中野がワースト9位になるなど、同じ緑区でも明暗が分かれている。(価格は1平方㍍当たり)【2023年10月1日号掲載】

□住宅上昇するも弱く

住宅地では、相模原市全体の平均変動率が2・1%(前年1・1%)と上昇率が拡大した。上昇率を区ごとに見ると、緑区1・8%(同0・8%)、中央区2・5%(同1・2%)、南区2・2%(同1・3%)とそれぞれ上昇となった。

緑区の橋本駅周辺では、交通利便性が高いことによる旺盛な需要に加え、リニア中央新幹線事業の進捗による発展的期待感から上昇が継続している。市内の横浜線各駅では、駅周辺部の価格上昇が波及し、バス圏においても地価の上昇が見られた。

市内の地点は上昇率上位10件から外れた。専門家によると、「開発への期待感は依然として高いものの、具体的なまちづくりの計画が定まらず投資の機会が見えにくい。南町田や平塚など、周辺に大規模商業施設やまちづくりが進む地域もあり、一部の需要が流出している」とする。

大和市は市全域で平均3・8%(同1・8%)上昇となった。前年4位だった「中央林間2―12―13」は、変動率を7・0%に拡大する堅調ぶりだが、藤沢市の「羽鳥1―4―7」や平塚市の「大神字門西橋2066番2外」にわずかに及ばず上位入りを逃した。

不動産関係者は「小田急江ノ島線と東急田園都市線の2路線が乗り入れ、東急は始発でもあるので座って通勤できる。商業施設が充実しているなど県内外問わず各方面への通勤に強みがある」と説明する。

□橋本が上昇率9位

相模原市緑区の商業地では、橋本駅周辺地区で駅周辺の整備発展や商業集積の期待感から、「橋本2―3―6」(10・6%)が市内でもっとも地価が上昇した地点となったが、旧津久井郡の下落率もマイナス0・8%(中野字上森戸225番1外)やマイナス3・3%(与瀬字稲原411番外2)となり、区内平均では3区でもっとも低い2・6%に上昇幅を留めた。

橋本
中央区はJR横浜線の駅に近い地点で3・4%(矢部2丁目、相模原6丁目)~8・7%(相模原5丁目)の強めの上昇を示した。一方で、同線から離れるほど上昇率が弱まる傾向がみられ、区内平均で3・8%(同0・9%)となった。

東京23区や横浜・川崎エリアへのアクセス性が良好な南区では、駅周辺の地価の上昇基調が他の区よりやや強く、相模大野駅南口前のロータリー(相模大野8―2―6)では8・7%と大きく上昇。区平均では3区で最大の5・4%(同2・6%)の上昇となった。

市全体としては3・7%(同1・1%)と上昇。橋本駅周辺地区は、リニア中央新幹線の事業進捗による、駅周辺の整備発展や商業集積の充実に対する期待感が続く。上層階を共同住宅として使用することが可能な地域では、将来のマンション利用を見据えた需要が地価を牽引しているとみられる。

橋本2丁目(3―6、78万5千円)の上昇率が10・6%(同6・8%)と上昇率が拡大したが、県内で9位(同3位)と順位を落とした。同じ緑区でも相模湖地域の与瀬(6万2千円)では下落率がマイナス3・3%(同マイナス5・0%)と下落率を縮小したが、前年と同じくワースト1位となった。津久井地域の中野(6万2600円)はマイナス0・8%で横ばいだったが、前年の28位から大きく順位を落とす結果となった。

□工業地は当麻5位

工業地では、県全体の平均変動率は前年同様に下落地点がなく、横ばいの地点がなくなり、上昇率が5・2%(同3・9%)と1・3ポイントの拡大。通信販売関連の貨物業者などの需要が旺盛なため、物流適地や倉庫適地に需要の増加が続いており、大幅な地価の上昇をみせている。さらに、消費地のごく近くに置かれる中小規模の倉庫用地などでも需要が増加している。

当麻
一方で、製造業が多い工業地では、工場、機械設備などへの設備投資の減退も見られる。県東部では、都内との価格差もあるため、自社倉庫、資材置き場などとして高額な取引状況も確認できる。

相模原市の工業地は13(平成25)年から12年連続で上昇しており、全体の上昇率が5・1%(同4・8%)とわずかに拡大した。南区当麻の地点(11万9千円)が9・2%(同8・2%)と上昇率が拡大し、県内上位5位中5位(同3位)にランクインした。

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