相模原市体育館、廃止時期延期で25年3月閉鎖/市内団体から伝統武術の衰退に懸念


相模原市が2024年3月に廃止の方針を示していた「相模原市体育館」(中央区富士見)について市は9月13日、市民環境経済部会で廃止時期を1年延期して25年3月末とする方針であることが本紙の取材で分かった。市は今後、市議会12月定例会議に廃止条例案を提出する見込み。日本古来の武芸の衰退を懸念する市内団体から、弓道場の移転・新設を望む声も出ている。【2023年10月1日号掲載】

市体育館は1957年の開設から65年以上が経過。老朽化が進み耐震性などに課題があることから、現在の指定管理者との契約が満了する24年3月末での廃止が公表されていた。市は利用者の意見や要望から廃止の影響を考慮し、廃止時期を1年延期した。市体育館は体育室のほか、90畳の柔道場、5人立ての弓道場などを有し、さまざまな団体の練習場所として利用されている。

老朽化で閉鎖が予定される市体育館

老朽化で閉鎖が予定される市体育館



市が21年に公表した「行財政構造改革プラン」において「築60年以上を超える老朽化が著しい施設」として廃止の対象となり、「周辺施設などを活用して代替場所の確保に努める」と位置付けられた。

だが、弓道場については周辺の代替場所の確保は難しく、相模原市弓道協会は継続使用か中央区内に弓道場の新設を求めている。

年間2万人を超える利用者の受け皿が懸念される弓道場

年間2万人を超える利用者の受け皿が懸念される弓道場



市立弓道場は市体育館のほか、北総合体育館(ほねごりアリーナ、緑区下九沢)、総合体育館(相模原ギオンアリーナ、南区麻溝台)の2施設があるが、同協会員の約8割が中央区の市体育館弓道場を利用している。

同協会の会員は現在約300人、中学生から80代まで幅広く、22年度には48人、今年度はすでに30人の新規入会があり、「会員数で県内最大規模」(同協会)の弓道団体となっている。

同弓道場の利用は原則、同協会員のみだが、県立相模原高校、麻布大学の弓道部の学生利用もあるため、年間利用者数は延べ2万1千人(市22年版統計書)にのぼる。

市が示した廃止方針は、代替施設とする緑区と南区の両体育館の利用枠を拡大。具体的には、午前の3時間1枠、午後の4時間2枠の計11時間を、2時間6枠の計12時間として多くの団体が利用できるよう配慮。しかし、市体育館に自転車や徒歩で通う会員や学生も多く、同協会は中央区から弓道場がなくなることで、弓道文化の衰退につながることを危惧する。

同協会はことし2月、本村賢太郎市長に「市体育館弓道場の継続使用がもっとも好ましいが、中央区内に代替施設の新設を希望する」趣旨の要望書を提出した。候補地として、横山公園(中央区横山)内の臨時開放される「第4駐車場」などを提案。市スポーツ施設課は「第4駐車場は水泳の大会の際に、大型バスの駐車場となるため、弓道場の新設は難しい」としている。

他の武道に比べ、活動場所に大きな制約がある弓道において、同協会事務局長の小川弘さんは「会員数が増加しているのに2施設では吸収しきれない。立派な施設ではなくプレハブでいいので新設を要望していく」と話す。

同課は「建物解体までできる限り現施設の利用に配慮し、利用者が代替施設へ移行が円滑に行えるよう、利用団体との対話を続けていく」としている。

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