NLJとアサヒG、西濃など、相模原経由でFC大型トラック実証


日野自動車子会社のNEXTロジスティクス・ジャパン(NLJ)、アサヒグループジャパン、西濃運輸などは、サステナブルな物流の実現に向け、5月から水素を燃料とした燃料電池(FC)大型トラックの走行実証を始めた。各社の実際の輸送業務に使用することで、水素燃料活用の可能性と実用性の検証を行う。FC大型トラックの走行は国内初。【2023年6月1日号掲載】

キャブ(運転席)の後部に搭載した燃料電池スタッグ

キャブ(運転席)の後部に搭載した燃料電池スタック



物流業界では近年、温室効果ガス排出量の削減など、サステナブルの必要性が高まっている。国内商用車全体の温室効果ガス排出量は、全体の約7割を大型トラックが占めており、特に幹線輸送に使われる大型トラックは十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とする燃料電池システムが有効であるとされている。

実証では車両性能に加え、複数のドライバーで使い勝手や乗り心地も検証。水素ステーションでの充填時を含む運行状況も確認する。モーター駆動のため振動や騒音が少なく、運転者の疲労を軽減し労働環境を向上するとも期待している。

アサヒグループとNLJは同19日から実証を行っている。茨城県守谷市の工場でビールや清涼飲料、東京都大田区の配送センターで洋酒やワインを積み込み、NLJ相模原センター(南区当麻)で荷を下ろした後、新たな荷物に積み替えて茨城工場へ戻る。万が一の場合に備えて輸送ルート周辺に水素ステーションがあること、大きな渋滞に巻き込まれた場合でも充分な航続余力があることを見込んで、実証実験のコースが選定された。

西濃運輸は、FC大型トラックにより東京都江東区の支店から神奈川県小田原市と同相模原市の2支店に混載荷物を輸送する実証を6月に始める。通常業務として、月曜日から金曜日の夜間に1日1往復、約220キロメートルを運行する。実証期間は1年から2年程度。年間67㌧の二酸化炭素CO2排出削減を見込む。

今回使用するFC大型トラックは25㌧仕様の日野「プロフィアFR」がベースで、水素を燃料とし、走行中にCO2など温室効果ガスを排出しないため、環境に配慮した車両。航続可能距離は約600㌔で、環境性能と商用車としての実用性を兼ね備えている。

トヨタのFCV「MIRAI」のFC技術を応用し、大型トラックに最適化したFCスタックを2基搭載。新たに開発した大量の水素を貯蔵可能とする大型高圧水素タンクを6本搭載する。貯蔵した水素と大気中の酸素をFCスタックに取り込むことで発電し、その電気でモーターを駆動させることで車両が走る。

関係者によると「時速80㌔定速で走行を維持する大型トラック幹線輸送特有の運行条件に対応するため、定格出力を引き上げるとともに、電力を発生する燃料電池セルの耐久性確保のため、電力制御についても変更した」。

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