【閲覧注意】相模湖周辺でも増えるシカ/獣害対策の現場を同行取材【下】


※狩猟の現実をお伝えするために、シカを解体する写真を掲載しました。ショッキングな描写が苦手な方などは閲覧をお控えください。

 

相模湖近くの若柳地区に住む竹内僚さんから、電子メールで「猟師(狩猟者)仲間の罠に鹿(シカ)がかかったので、明日(12日)仕留める」と連絡があったのは、前日の午後6時過ぎだった。相模原市緑区の山間部では、シカやイノシシなどが畑の作物や樹木の樹皮などを食い荒らす「食害」が後を絶たない。10日に降った雪がまだらに残る12日、相模湖近くの農作地(畑)でシカが罠(わな)にかかり、僚さんと陶子さんの竹内夫妻が仕留めた。「獣害駆除の現実をできる限り生の状態で伝えたい」と考え、本紙記者も同行した。【2023年3月1日号掲載】

【上から続き】 ニホンジカによる市内の農業(野菜、豆類、果樹など)被害は12万円ほど。餌の少なくなる冬期は、人家周辺など生活圏内においても目撃されることがあり、市街地にも出没して自動車と接触事故を起こすなど生活被害も発生している。

鹿解体 (2)市鳥獣被害防止計画が掲げる2022~24年度の捕獲計画数は、年間300頭ずつ。シカの繁殖力は強い一方で、本州は天敵となるオオカミなどの中型以上の肉食動物が少ないことが頭数増加の原因とみる。加えて、「マタギ」と呼ばれていた狩猟を生業とする専業者が、山間地域から不在となったことも一因のようだ。

狩猟には、知事(相模原市では神奈川県知事)が交付する▽罠猟(わなりょう)▽網猟▽第1種銃猟(装薬銃)▽第2種銃猟(空気銃)―の免許を取得しなければならない。猟銃の所持には、住所地の公安委員会(相模原市内在住者は神奈川県公安委員会)からの許可が必要となる。

仕留めたシカの皮を剥ぎ解体していく参加者ら

仕留めたシカの皮を剥ぎ解体していく参加者ら



県内の狩猟者登録数は約1900人で、2010年代前半まで減少傾向にあったが、近年はジビエブームなども後押ししてやや増加に転じている。火薬式の猟銃を扱う第1種が約1400人と最多で、次いで網猟が約380人と多かった。

今回、農耕地の所有者は「罠猟免許」のみの保持で銃器による駆除ができないため、同じ猟友会に所属する竹内夫妻に依頼があった。鈍器や槍などを使って仕留める場合は免許が不要となるが、一撃で命を奪えずに余計な苦しみを与えることや、猟師がシカに蹴られて大けがを負う恐れがある。

昨今の世界情勢は獣害対策の現場にも響く。猟銃の弾薬は1発200円程度。長期化するウクライナ危機の影響に円安傾向が重なり、日本国内でも価格高騰と品薄が続く。陶子さんは「切らさないように1発ずつ慎重に使っている」と明かす。

竹内夫妻の今シーズン(2022年11月15日~23年2月15日)は今回のシカ1頭のほか、イノシシ2頭とタヌキ1頭が成果。シカやイノシシは肉を食用に、皮は革細工に用いている。

野生鳥獣による被害は、営農意欲を減退させることで耕作放棄地の拡大を招き、過疎化が進む大きな要因の一つとして考えられる。一方で「命の尊厳とは」という側面も考えてしまう。今回の取材では「結論を見つけ出すことができなかった」というのが正直なところだ。機会があれば、また害獣駆除の現場を取材したい。

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