コスモ精工、自社ブランドで装置製造に進出


「図面通りのものづくり」
 金属部品加工を手掛ける企業なら当たり前のようにも思えるが、御社最大の強みはと聞かれ、こんな回答をする企業がどれほどあるだろうか。
 穏やかな口調で即座にこう答えるコスモ精工(相模原市緑区橋本台3-5-17、三角金蔵社長)の藤川芳樹工場長からは、技術者としての誇り、自社技術に対する並々ならぬ自信が窺える。
 同社は1978年、川崎市麻生区にて設立。事業の発展とともに81年に町田市、07年に相模原市へと拠点を移した。
 手掛けるのは主としてステンレス、アルミの精密部品加工。受注案件は、MRIなど医療関係が3割、ステッパーなど半導体関係が2割、施設・プラント関係が3~4割で、顧客数は決して多くないが、売り上げのおよそ8割が業界大手との直接取引であり、寄せられる信頼は絶大だ。
 「図面通りのものづくり」をあえて標榜する根拠は、研磨面並みの精度を切削加工で出す高い技術力にある。NC加工機、マシニングセンタ全盛の現代でも、汎用機で培った技能や経験をフルに生かし、こと精度の追求には余念がない。三次元測定機を導入しての品質管理、データ保存も徹底しており、同社では、顧客からの要求がなくても、幾何交差3ミクロンの精度を全数保証している。
 こうした技術力の背景にあるのはもちろん、優れた人材だ。チャレンジ精神と品質の追求は創業以来、同社の伝統であり、従業員の間には、精度で顧客を喜ばせるのが当たり前という共通認識がある。とはいえ、同社の求める人材について藤川工場長は、「単に優れた技能を有するのではなく、手掛ける事業特性に見合った領域での技能に優れることが重要」と話す。
 医療関連の受注を安定確保していたことで、同業者の多くが“瀕死の重傷”を追ったリーマンショック時も土台が揺らぐようなことは全くなかった同社だが、3年ほど前から少しずつ将来的な危機感が膨らみつつある。
 一つはやはり全般的な受注減。さらに、ある得意先が発注先を集約したために重要案件を失ったことが追い撃ちをかけた。
 このため同社では、能力、熱意両面の総合評価に基づいた従業員削減を図る一方、昨年からホームページを開設してのPR活動と、自社ブランド製品の受注製造販売をスタートさせた。
 「ホームページは予想以上の反響。ご用聞きではなく、内容を見極めてから受注できるのもメリット。自社ブランド製品は、縦型NC機や旋盤のバーフィーダー等の装置が主体。設計から組立まで内製率はほぼ100・で、顧客の要求にピンポイントで対応する高精度の製品を廉価に提供できる」と藤川工場長。
 既に自社ブランド製品のほうは昨年、全売上の2割ほどに上るなど、手応え十分。やや横に広がった事業を、少数精鋭の組織でどれだけ効率的にこなしていくかが今後の課題だ。

図面通りのモノづくりが強みという藤川工場長

図面通りのモノづくりが強みという藤川工場長

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