【元専門紙記者の建物探訪】町田ゼルビアの練習拠点整う/J1昇格への条件そろい活動本格化


建物探訪 プロサッカーJ2リーグのFC町田ゼルビアにとって悲願とも言えるクラブハウス「三輪緑山ベース」(延べ1775平方㍍)がこのほど、町田市三輪緑山に完成した。外壁に大小さまざまな大きさの窓を配置することで、「建物内に緑豊かな周辺の景色を取り込み、 グラウンドに躍動感を与える」ような工夫が施されている。天然芝の練習グラウンドと収容人数1万5千人のスタジアムに続いてクラブハウスが完成したことでJ1昇格への施設要件がそろい、今シーズンの活躍に期待がかかる。【2022年3月22日号】

ランコ・ポポヴィッチ監督は「日本のクラブハウスでこんなにも開放的で快適な施設はみたことがない。多くの人々の愛情がこの環境に繋がっていると感じる」と語った。

同工事は、 同チームの運営会社であるゼルビア(同市大蔵町)が市から鶴見川クリーンセンターの一部の土地を借り受けて進めている整備事業の一環。クラブハウス2棟と天然芝グラウンドを整備した。

ゼルビア 「自然との調和」をコンセプトにしたクラブハウスは、国立競技場などをてがけた建築家・隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所)が設計などを担当した。鉄骨造と木の新素材を生かした木造のハイブリッド構造となっている。「緑あふれるこの環境を見た瞬間に、自然と一体となった、開放的で温もりを感じられるクラブハウスを作ろうと思った」(隈氏)という。

デザイン面では、前面に整備された緑のグラウンドへの広がりをつくるため、吹き抜けのエントランスは全面ガラス張りとした。階段にはサッカーゴールを模したネットが施されるところもポイント。壁や床にはサッカーのピクトグラムやゼルビアブルーを取り入れ、ゼルビアらしさが表現されている。

屋根についてはボールが跳ねるようなイメージで大きく斜めに跳ね出す形状とし、その下に開放的なデッキテラスが配置されている。選手のロッカールームなどの内装部には木を用いており、温かみのある空間が演出されている。

ゼルビア2 クラブハウスは鉄構造のブレース付きラーメン構造で、屋根を木造とするハイブリッド構造が採用されている。屋根の野地板に「CLT」という木質新素材を約34㎥使用しているほか、屋根を支える垂木には軽量かつ高い強度と安定性を備えた新素材「TJIジョイスト」を約14立方メートル使用。 鉄骨のフレームにこの新素材を架けることで、チーム名「ゼルビア」の由来でもあるケヤキ(英語名ゼルコヴァ)の枝が広がっているようなフレーム構成となる。

 ディフェンダーの深津康太選手(37)は、クラブハウスについて「窓が大きく、建物の中はロッカールームをはじめたくさんの木の素材が使われていて、何だかほっとしている」と話す。充実したトレーニングルームや、練習後にすぐにシャワーを浴びて食事が摂れることについては「他のクラブにとっては普通かもしれないけど、そういう当たり前のことがすごくありがたい」とし、「この恵まれた環境に慣れるのではなく、感謝の気持ちと覚悟をもって、全試合に臨む」と誓った。

 

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