国や神奈川・山梨・静岡の3県などで構成する「富士山火山防災対策協議会」は、富士山の噴火を想定したハザードマップが17年ぶりに改定し、噴火で流れ出る溶岩が相模原市など数十キロ離れた地域にまで及ぶおそれを想定している。最新の知見を基に試算したところ、従来想定より影響範囲が拡大したため。活動火山対策特別措置法(活火山法)に基づく火山災害警戒地域に追加指定され、県と市が連携して防災計画の見直しなどを進めていく。
国が2004年に策定した富士山ハザードマップでは、溶岩流が達する可能性のある自治体を麓がまたがる山梨と静岡の2県15市町村としていた。協議会が最新の知見に基づき18年から改定作業を実施し、火口範囲を山頂から半径4キロ以内全域を含めたところ、神奈川を含む3県27市町村に拡大する可能性が示された。
北東側の火口から、記録上最大とされる貞観噴火(864~866年)並みの溶岩噴出(13億立方㍍)があった場合、40㌔以上離れた相模原市緑区には最短で227時間(9日と11時間)後に到達する試算。山梨県上野原市方向から桂川や相模川を沿って市内に流れ込み、相模湖の下流側まで至るとみられる。JR中央本線や中央自動車道にも達し、市民の通勤・通学や物流などにも影響を及ぼす可能性がある。
相模湖近くに住む人も「宝永噴火(1707年)で相模原にも火山灰が降ったという話は聞いたことがあるが、溶岩流がここら辺りまで達するとは思っていなかった」と驚きを隠せない。
市はウェブページで「市内に火山はないが、周辺で本市に被害を及ぼすおそれがある主な火山は、箱根山と富士山が挙げられる。これらの火山が噴火した場合には、降灰等による影響が出る可能性がある」と説明。大量降灰時に予想される主な影響として、「呼吸器系への影響」といった健康被害のほか、「交通輸送力の低下」「農作物収穫量」「空調機や電算機への障害」などを挙げている。
溶岩の想定噴出量を過去5600年間で最大規模の噴出を参考に、従来の約2倍の13億立方㍍とした。火砕流も約4倍の1000万立方㍍に更新。地形データも前回より詳細に設定した。
報告では「過去の噴火の96%が中小規模の噴火だが、次の噴火が頻度の低い大規模な噴火になる可能性もある」と指摘している。