山際華代子さん、踊る楽しさと喜び伝える/バレエ指導一筋に38年


「一番好きな作品はジゼル」という山際さん

「一番好きな作品はジゼル」という山際さん

 「クラシックバレエの魅力は、どんなに努力を積み重ねても、まだその先に限りない可能性が広がっていることですね」と熱く語る山際華代子さん。3月4日に37回目の発表会を相模女子大学グリーンホールで開いた吉原バレエ学園の主宰だ。小田急相模原本校(相模原市南区南台)をはじめ市内外に合わせて5つの教室を設け、ロシア・ボリショイバレエ学校での研修なども実施している。海外にはばたく教え子を輩出しており、自身も生徒に付き添って世界各地を飛び回る忙しい日々を送っている。
(編集委員・戸塚忠良/2017年3月20日号掲載)

■バレエに恋して

 東京・世田谷区に生まれ1歳のとき町田市に転入した山際さんは5歳からバレエを習い、ロシアのバレエ団の来日公演を見て感動。「あの中で踊ってみたい。何で私はロシアに生まれなかったのだろう」と本気で悔しがった。

 中学から玉川学園で学び、高校2年生のときミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の圧倒的な迫力に心を動かされ、「ニューヨークでジャズダンスも学んでみたい」という夢を抱くようになった。

 その一方、成長するにつれて、「私には、他人よりも目立とうという気持ちが無さすぎる。バレリーナとしてやっていくのは難しいのではと感じるようになった」という。

 心の中での葛藤はあったがバレエへの愛着は募るばかりで、玉川学園女子短大保育科を卒業するとき、バレエの指導者になることを自分の道に選んだ。

■教える喜び

 短大を卒業した1979年から小田急相模原の教室で生徒の指導にあたる一方、自己研さんにも努め、著名な指導者に師事して技術を習得し、テレビ出演も果たした。あこがれのニューヨークへ留学し、「モダンダンスやジャズダンスも学んでとてもいい経験になりました」と回想する。

 教室の運営は当初から順調だった。「クラシックはすべての基礎。たとえば、手の動き一つ一つにも意味があり、言葉の役割を持っています。いろいろな分野に挑戦する可能性を広げるためにも基礎の習得が何より大切。学びながらバレエの楽しさと踊る喜びを感じてほしい」というのが指導理念だ。

 開設以来ずっと生徒の個性に応じて分かりやすい言葉で教えることを心がけ、「飲み込みが早いかゆっくりかの違いはあっても、子どもたちは必ず分かってくれます。教えたことを実際の踊りの中で表現してくれると、この上ない喜びを感じます」と熱を込める。

 バレエを通して子どもたちに伝えたいことは、踊りの技術だけではない。人間性を磨くことにも役立ててほしいと願っている。「立ち居振る舞いや礼儀、それに、ほかの人の話をしっかり聞く耳を持つ習慣を身につけさせたい。ここで学んだことをこれからの人生に生かしてほしい」、こう語る表情には生徒の未来を思いやる気持ちがにじむ。

■世界にはばたく

 教室から優秀な生徒が輩出しており、20年前にカナダに留学しその後カナダ国立バレエ団で活躍した大野大輔さんをはじめ高橋愛美さん、藤則友希さん、山際諒さんなど指導者として活躍している卒業生も少なくない。
 
 今も14歳の亀田直子さんがボリショイバレエアカデミーに留学中で、今春イタリアやアメリカの国際コンクールに挑戦する教え子たちもいる。

 昨年の第14回全国プレバレエコンクールinさがみはらでは亀田智世さんが審査員特別賞と商工会議所会頭賞を受賞したほか多くの教え子が受賞。山際さん自身も指導者賞を獲得した。

 今年2月にウイーンで開催されたヨーロピアンバレエグランプリでは渡邊美菜実さんが2位に入賞している。

■楽しくバレエを

 山際さんは世界を視野に入れた生徒育成に努める一方、地域活動にも積極的だ。相模原青年会議所での活動歴があり、㈲吉原バレエ学園代表取締役として相模原法人会に加入。青年部、南台地区長を経て近く相模台支部長を務めることになっている。「住みよく活気のある街づくりに地域が一体になって取り組むための役に立ちたい」と意欲的だ。

 今は、市内に4つ、川崎市内に1つの教室を設け、2歳から高齢者まで90人あまりの生徒を抱えている。だが、「ニューヨークで高齢女性たちが笑顔いっぱいにバレエを楽しんでいる情景に遭遇したときの衝撃は忘れられません。生涯学習としてのバレエの可能性に気付きました」と、教室に男性や高齢者が気軽に通う時代が来ることを願い、世代を問わずバレエ人口が増加することを熱望している。

 そして、「みんなが楽しくバレエができればいい。その気持ちを忘れずに続けてほしい」と、バレエを愛する人たちに心のこもるメッセージを送る。

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