衹園義久氏、「運ぶちから、未来をつくる」掲げ/地域密着のギオン


創業者の祇園会長

創業者の衹園会長

 ギオン(相模原市中央区南橋本)は今年度、創業50周年を記念するさまざまな行事を行う。物流を事業の柱とする同社は、相模原市を拠点に半世紀にわたり着実な歩みを続け、時代の流れを先取りして事業を拡大してきた。記念行事は地元への感謝の気持ちを形にするためのもので、地方自治体や学校などへの寄付を行うほか、取引先や業界関係者を招待しての謝恩ゴルフ会や周年式典、社員を慰労するためのパーティーも開く。「運ぶちから、未来をつくる」を掲げ、総合物流企業を目指すギオンの足跡をたどり、現在の姿を紹介する。(編集委員・戸塚忠良/2016年7月10日号掲載)

■事業拡大の道

 ギオンは現・代表取締役会長の衹園義久氏(74)が1965年に創業し、70年に運送事業を行う衹園興業として設立。相模原市中央区清新に、その後の発展の礎となる事業所を開設した。

 その後すぐに保険業、引っ越し業に参入。72年に株式会社化した。さらに自動車部品などを手掛ける東京濾器とタイアップする事業にも乗り出し、雪印乳業と共同出資して日本流通企画を設立した。

 社業は隆盛を続け、2001年以降、合併や子会社の設立、新拠点設置、グローバル化への対応などを重ね、09年に町田市、12年に相模原市の指定管理者事業を開始した。

 近年、力を入れているのは、環境保全への貢献事業。物の管理・配送という「動脈物流」のみでなく、回収・リサイクルという「静脈物流」にも目を向け、物流の幅を拡大・深化させている。

 また、「地元密着の企業であり、相模原への愛着は深い」と衹園会長が語る通り、市麻溝公園競技場のネーミングライツを獲得し、相模原ギオンスタジアムと名付けた。同スタジアムをホームグラウンドとするサッカークラブ「SC相模原」のメインスポンサーも務めている。

■多彩な事業

 現在、ギオンは全国各地に50以上の拠点を持ち、6つの関連会社とともに事業を行っている。その実際の内容は、食品物流、工業製品物流、機密文書保管、物流オペレーション・コンサルティング、輸出入関連サービスなど。「顧客優先」「安全第一」「積極果敢」がモットーだ。

 物流企業として重点的に提案しているのは、物量の変動に応じた的確な配車調整と人員配置。荷主にとって稼働車両と人員の削減が可能となり、コストダウンにつながるというメリットを強調している。また、遠隔地の得意先への同時配送によってコストを削減するプランも提案している。

 これらの背景には、首都圏を起点にして東北から中国地方までの広域エリアをカバーする、幹線輸送便ネットワークを構築した実績がある。

 この中で、重要な位置を占めているのが、15年に開設した相模原センター。圏央道相模原インターに隣接し、広域エリアにつながるアクセスの良さを備える好立地性が何よりの特長だ。プレキャストコンクリート免震構造4階建てで、延べ床面積は2万7657平方メートル。太陽光発電、LED照明を備え、立地・安心・環境三拍子そろった物流倉庫で、新しい業務として、「文書管理」の機能も備えている。

 関連企業は、「興亜商事」「ユニテックス」「新日本流通サービス」「ギオンデリバリーサービス」「ギオンリサイクル」「ギオン環境サービス」の6社。

 それぞれに専門分野を持ち、3温度帯配送、宅配サービス、包装プラスチック・ペットボトルの中間処理と自社工場での企業廃棄物処理など、リサイクルの企画・提案・実行管理まで一貫したコンサルティングを担当している。

 また、大リーグのイチロー選手の活役で有名になった「初動負荷トレーニング理論」に基づいた、運動機能改善・リハビリ・競技能力の向上など、目的に応じたトレーニングジムの運営も、町田・池袋・相模原の3カ所で行っている。

■無借金経営

 「ギオングループの一員として誇りを持ち、常に前向きになって自己と対峙する姿勢を持つこと」を社是に掲げる企業だけあって、社内教育にも熱心だ。コンプライアンスや交通安全などをテーマにしたセミナー、幹部候補生を育てるための資格取得教育、海外研修などを実施している。

 50周年記念行事は7月11日と9月12日の2回にわたり、取引先や業界関係者合計400人を招待して自社負担の謝恩ゴルフ会を開催し、9月23日には帝国ホテル(東京都千代田区)で周年式典を開催する。また、市内外の学校への寄付なども予定している。

 また、「現場があって、現在の会社がある。いままでの現場の皆さんの貢献に対して、今年度は2回の賞与のほかに、10月に特別賞与の支給を行う」という。

 「ここまで会社を育ててくれた人たちと地域への恩返しの気持ちを表したい」という衹園会長の思いを込めた企画だ。

 創業以来、1度も赤字決算に陥ったことがなく、同社は今も無借金の健全経営を続けている。

 衹園会長は「環境に適応した生き物だけが生き残ることは、地球の歴史が物語っている。日本社会は少子高齢化と労働人口の減少という、労働集約型の物流事業にとって厳しい未来が待っている。それを見越してどう乗り切るかを考え、策を講じるのが経営者の役割。変化に対応しながら堅実に経営していきたい」と、淡々とした口調で語る。
(2016年7月10日号掲載)

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