原やすみさん、相模原の未来探る番組も/地域と一体のFMさがみ


地域密着を大切にする原さん

地域密着を大切にする原さん

 FMさがみは83・9MHzのコミュニティ放送局。地域の情報発信源だ。相模原市と隣接する地域のとれたて生情報や幅広い分野の個性的なパーソナリティによるトーク番組、リラックスできる音楽番組、身近な不動産法律相談などのほか、「市長と語る」「さがみはら高校生クラブ」「どうなる明日の相模原」といった多彩なプログラムを提供している。今年9月に開局20周年を迎える地元ラジオ局のリーダー、原やすみさん(59)に情報発信に託す思いを聞いた。(編集委員・戸塚忠良/2016年1月1日号掲載)

■雑誌から電波へ

 原さんは相模原市東橋本の出身。産能大を卒業後商社に勤めたが、26歳のときオートバイ雑誌の編集プロダクションに移った。企画ブレーンの役割を担い、プロモーションビデオの制作にも携わった。企画から市場投入、プロモーションまで一連の仕事を体験する中で「製品を世に出す面白さを知った」という。

 その後、仕事上の知り合いが国の規制緩和の流れに乗って浜松市で開いたFM局を見学する機会があった。「スポンサーの意向に沿って取材、編集をする媒体ではなく、ラジオは純粋なメディアと言えるのではないか。面白そうだ」という手ごたえがあった。

 ふるさと相模原でFM局を開こうと考えた原さんはまず、市内の西門地区の人たちに計画を持ちかけ開局に向けた協議会を作った。さらに具体的な動きを進める中で、免許を取得するためには地域のコンセンサスが必要であることを知り、思い切った手法を取ることに決めた。

 「当時、市内に法人化している商店街が23か24あった。その理事長全員に賛同のハンコをもらうことにした」のである。「皆さんが快く賛同してくれた。今でも感謝している」という。

 こうした経緯があって郵政省に免許の申請に出向くと、「行政の資本が入らず、商店街中心の民間資本の計画は珍しい」と歓迎してくれた。

■FMさがみ開局

 96年6月に自らが代表取締役を務める㈱FMさがみ(中央区相模原)を設立し、9月15日に放送を始めた。愛称は「相模原・楽天的な・おしゃべり・継続」の意味を表す英語の頭文字を組み合わせてSOCKとした。全国43番目、県内7番目のコミュニティF放送局である。

 「電波を生かして、いろいろな人におしゃべりに参加してもらい、自由な表現の場にしたいと思った」。開設時のこの思いは今も変わらない。経営経験は無かったが、「聴いてくれる人がいれば、コマーシャルの需要もあるはず」と、楽観的な将来展望を持っていた。

 しばらくはバブル崩壊に伴う不況と局外からの横槍のため運営面で苦しい時期もあったが、平岩夏木さん(現・副社長)という力強いスタッフが加わったことも支えになって乗り越えていった。

■災害情報拠点

 地域密着の情報拠点という性格は開局以来変わらず、特に災害情報の発信源として、コミュニティ放送ならではの貴重な役割を担っている。

 その軸は相模原市との防災協定。市内で震度4以上の地震が発生した場合や東海地震の警戒宣言が発令された場合に通常放送を中断し、市内に設置されている緊急災害情報「ひばり放送」と同じ情報を流すシステムだ。

 実際にこのシステムが作動した事例もあり、正確な災害情報を得る上でラジオが非常に頼りになることを強く印象づけている。

 現在は町田市とも協定を結び災害発生時には帰宅困難者に情報を提供する。また、愛川町とも防災協定を結んでいる。

 経営面ではまだまだ楽ではないが、地域への浸透が深まるにつれてコマーシャルも増えて好転しつつある。クライアントは地元のラジオ局に協力しようという企業と地元のリスナーにPR企業が市販半の感触だ。「時間帯によってリスナーが違う地乳違うのは、広告媒体としての長所」と語る。

 開局20周年を迎えることし9月からは、公募で決めた新しい愛称『FM HOT 839』を使うことにしている。「サウンドロゴを変えることで、より多くの人に親しんでもらえれば」と、地域へのさらなる榛東への意欲をのぞかせる。

 これからの経営方針については「時流に合わせて変化していかなければと思うが、聴く人にとって有用なメディアでありたいというスタンスは変わらない」と力をこめる。

■市の未来への視線

 仕事以外の場では、相模原商工会議所都市産業研究会に参加して市内産業人と自由闊達な意見交換を行い、市の望ましい将来像を模索する活動を長く続けている。

 会はこれまでに「自立都市相模原」「グリーンコンパクトシティ」などのビジョンをまとめて市に提言しており、会長経験者である原さんは「地域の将来を真剣に考える人たちとの論議は自分にとっても大きなプラスになっている。これからも市の将来というテーマを頭の中に置いて活動していきたい」と話す。

 放送番組の中にも「一緒に考えよう!相模原の未来!日本の未来」と銘打ったプログラムを設定している。FMさがみが発信しているのは、リスナーのニーズに応える情報とエンターテインメントであるのはもちろんだが、自分たちの地域と国の未来を共に考えようというメッセージがそれと表裏一体になっている。

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