カナコー、ロマンや遊び心が潜む5本柱の多角事業を展開/清掃、建築、土木、文化財発掘、ステージ


「事業ごとの人材育成に努めたい」と大久保専務

「事業ごとの人材育成に努めたい」と大久保専務

 住宅や校舎を建設する一方、道路・河川工事も手掛ける。と、ここまでは一企業としてよくある事業展開。加えて集合住宅清掃。これもあり得る。

 しかし、その上埋蔵文化財発掘調査を手掛け、さらには舞台設置や音響・照明・映像システムの提供・運営など一連のステージサービスまでとなると、これはもう一中堅企業の仕業とは思えない。

 カナコー(相模原市南区麻溝台、大久保眞介社長)が展開する事業の多角ぶり、つかみどころのなさには驚かされる。

 同社は1960年に創業。日本住宅公団(独立行政法人都市再生機構)からの営繕、一般清掃業務を起点に他の事業を加えつつ、半世紀余に及ぶ社歴を形作ってきた。

 現在、集合住宅清掃、建築、土木、埋蔵文化財発掘調査、ステージサービスの5本柱を持つが、ユニークさと実績で同社の個性を際立たせているのが発掘調査とステージサービスだ。

 発掘調査の本格スタートは81年で、取引先を介し受注した座間市内の県立高校建設に伴う調査工事がきっかけ。

 使う機材や作業自体は土木の類いだが、設計図面に従って仕上げる一般土木と所在不明の埋蔵物を土中から掘り出す発掘調査では、手順、進行、精度が全く異なる。しかも、比較的工期が長い上、考古学の専門機関をサポートする報告書整理等の業務が求められるため、スタッフにも相応の知識、経験が必要となる。

 同社はこうした煩雑さをいとわず積極的な受注で実績を重ね、93年には同事業部門の拠点として伊勢原市内に県央支店を開設。02年には、発掘調査企業としては国内で初めてISO9001‐2008認証を取得するなど、専門機関から高い評価、信頼を得ている。

 ステージサービスは、大久保社長の個人的趣味と人脈から派生した事業で01年、イベント企画と移動ステージカー営業からスタート。以後、音響・照明・映像システムをも手掛け、屋内外問わず、数千人規模のコンサートやイベントに対応できる。166インチLEDディスプレイを積載した画期的なビジョンカーとともに、相模大野のもんじぇ祭りを始め、全国各地で出張活躍中だ。

 今後について同社の大久保貴章専務は、「引き続きこの5本柱の維持、成長を図っていく。人事異動で社員をマルチ対応型にするのではなく、各事業部門ごとにスキルの高い人材の確保、育成に努めたい」と話す。

 そして実はもう一つ、収益は生まないが、同社ならではの事業がある。本社近くの麻溝台営業所屋上にある私設天文台だ。

 趣味多彩な大久保社長の計らいで96年に開設。口径9センチの屈折望遠鏡を同架した口径35センチの反射赤道儀をドームに収める本格仕様で、希望すれば、1人からでも無料で利用できる。

 企業の本質は利益の追求。同社とて例外ではないが、そこに何かロマンや遊び心が潜む。そんな心のゆとりを感じる。  (編集委員・矢吹彰/2015年9月20日号掲載)

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