20代、30代が新居を求めるベッドタウンとして発展してきた相模原、町田両市民の平均年齢も、今や40代半ば。ますます進展する少子高齢化で、リフォーム事業の好況が続いている。
「嘘や偽りのない正直な仕事」
そんな中、リフォームに伴う住宅の建築・防水塗装等を手掛けるアヤノ塗装(町田市小山町804の4、渋谷渉社長)は、ともすれば陳腐ととられかねないスローガンをあえて前面に掲げる。
業界内の競合が激しいことは、巷に多くの事業所が存在することから見て取れるが、その質が玉石混交であることは一般消費者には分かりにくいからだ。
「比較のための相見積など日常茶飯事。ただ、価格で選んだ業者の質は仕事が終わらなければ分からない」と話す渋谷社長は若干34歳ながら、既にこの業界で18年のキャリアを持つ。
実家は八王子市内で塗装業を営む。16歳で現場に入り、次男ということもあって19歳で家を出て修行。05年に24歳で個人事業主として独立、08年に法人化にこぎ着けた。
なにより現場経験こそがものをいう職人の世界にあって、渋谷社長は資格取得に積極的だ。一級塗装技能士、一級防水施工技能士(シーリング、ウレタンゴム系塗膜)、樹脂接着剤注入施工技能士、等々。この手の資格には、特定の施工を請け負うのに必須のものもあるが、そうでないものも少なくない。
例えば一級塗装技能士。この資格がなくても塗装の仕事はできる。それにもかかわらず、受験資格は実務経験7年以上か二級取得後2年の実務経験、実技と学科試験で合格率50%前後という狭き門にあえて挑戦する意義は何かといえば、一種のプライド。それは自己満足ではなく、正しい知識、高い技術を有する業者であると広くPRできることから来るものだ。
また、資格を持つ外注先を束ねるブローカーが横行する業界にあって、社長自ら資格を取得することで、価格面を含め「嘘や偽りのない正直な仕事」に努めている。
折り込み広告やホームページを通じての反響営業も徐々に増えているが、現時点では有力な見込み客獲得は紹介が多い。
「紹介の場合、当初から信頼感を持ってもらえるメリットはあるが、事前に予算がほぼ決定済みでプランニングの幅が狭い。顧客ニーズに応じた適正材料、工法、そして予算まで、一連にわたる提案型営業を広く展開していくのが今後の目標」と渋谷社長。
4年ほど前、知人の紹介で三島市内の高層マンションの外壁塗り替えを手掛けたのをきっかけに、地場の職人を集めて静岡営業所(静岡市清水区)を開設。現在、東京、神奈川、静岡を中心に関東、東海一円に営業展開している。
23区内に東京営業所を開設し、潜在顧客の多い都内での営業力強化を図ることも、さらなる目標の一つだ。(編集委員・矢吹彰/2015年6月20日号掲載)