ウィザード、「社員とその家族の幸せ」が会社の存在価値/ソフトウェア開発


「会社は社員のためにある」と日野社長

「会社は社員のためにある」と日野社長

 橋本駅から徒歩5分ほどの国道16号沿いにモダンな自社ビルを構え、社長以下全社員が技術者、出向や出張等はほとんどなく勤務時の服装は自由。ソフトウェア開発をはじめIT関連業務を手掛けるウィザード(相模原市緑区橋本2の20の22、日野範明社長)は、そんなユニークな企業だ。

 本来「魔法使い」を指すwizardには、時流の中で転じた「複雑な処理を段階的に行なう対話型コンピュータプログラム」「熟練者」といった広義があり、なかなか気の利いた社名といえる。

 日野社長は大学卒業後、大手電気機器メーカーの富士電機で17年間、制御装置の開発に従事した。生活は安定していたものの、先の見える人生に疑問を感じ、町田市内のソフトウェア開発会社に転職。当初から独立を志向していたわけではないが、7年後の1998年に縁あって起業した。

 相武台の小部屋に2人でスタート。その後、SIC(さがみはら産業創造センター)等に事業拠点を移しながら成長を重ね、2007年に現在の本社ビルを開設するに至った。

 この間、IT関連業界にも労働者派遣法の規制緩和に乗じた形で躍進した企業が極めて多いが、同社事業の核は自社内作業による受託開発。それには日野社長の経営理念が密接に関わっている。

 「社員とその家族の幸せを提供できてこそ、会社の存在価値がある。そのために必要であれば大きくなることも目標になり得るが、それ自体に価値はない」

 こう断言する同社長にとって、仕事の増減に応じて会社都合の雇用と解雇を際限なく繰り返せる派遣事業は、容易には受け入れがたいものなのだ。

 とはいえ時代の流れは速く、変化は激しい。仕事の主導権が取引先にある以上、理想ばかり追い求めていては、それこそ破綻の航路へと舵を取りかねない。

 リーマンショックの衝撃をも社員のリストラ無しに乗り越えてきた同社だが、ここにきて少々軌道修正を施している。

 主要取引先である富士電機、日本ユニシスなど大手5社が、業務系から制御、環境、コンシューマ系までさまざまな分野のソフトウェアを高水準で受託開発してきた同社に寄せる信頼は揺るぎない。だが、受注単価は下がる一方。おそらくこの流れは今後も止められない。

 「ビジネスの主導権を握れる自社製品を開発していく必要がある」と日野社長。

 その第1弾として3年前、さまざまな業種・規模で手軽に導入でき、拡張性に優れたクラウド型在庫・販売・POS管理システムを開発、売り出し中だ。ただ、取引先関連への口コミやホームページでの紹介だけではPR不足であるため、営業職の新規雇用を検討している。

 また、第2、第3の矢を放つには開発資金がいる。そのために最近、3名の派遣社員を雇用。派遣事業を基幹には据えない自律心を保ちつつ、今後少し広げていく計画だ。 (編集委員・矢吹彰/2015年6月10日号掲載)

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