ジャパンセル、ものづくりにこだわりつつ スマートに体質改善/精密光学ガラス加工 精密ガラス部品の製造


将来構想を思い描く深澤社長

将来構想を思い描く深澤社長

 根底には、精度追求のためには僅かな妥協も許さぬ頑な職人気質が脈々と受け継がれているのだろうが、あえてその部分をほどほどに希釈して見せている。精密光学ガラス加工、精密ガラス部品の製造・販売を手掛けるジャパンセル(町田市小山ヶ丘2丁目2の5の11まちだテクノパーク)はそんなスマートな企業だ。

 そのプロデューサーともいえる深澤篤社長は2代目、39歳。

 精密ガラス加工は祖父の代に始まる家業で、そこから1982年に父・一氏が独立、起業。液体や気体など様々な物質を封入し、紫外線やレーザー光等を透過させて各種実験を行うための分析装置用ガラス容器(セル)を製作する高度な加工技術を基幹に成長してきた。

 大学で海洋土木を専攻した深澤社長は当初、家業とは異なる道を歩み始めたが、99年に方向転換。取引先への出向から製造工場での品質管理、営業等、一連の経験を経て09年から社長を務める。

 「海洋土木は非常にスケールの大きな仕事だが、建設現場ではミリ単位の精度が求められる。これはセル製作でミクロンの精度を追求するのと同じことで、全く異なる業界とはいえ、ものづくりという観点では共通するものがある」

 こう話す深澤社長は“アナログ人間”を自認。プラモデルづくりや車いじりのような手作業を好むような人間でなければ、一緒に仕事をしたくないし、ものづくりの組織として上手くいかないとまで主張する一方、極めて実利的で柔軟な考えも持ち合わせている。

 「経験を要する職人的技術は確かに一部あるが、一人前になるのに10年かかる仕事で今後人材を確保できるのか。そもそも現在の技術を伝承し続ければ安泰なのかといえば、市場の変化は速く激しい。常にニーズをつかみ、対応していかなければならない」

 将来的には可能な限り作業工程を平準化し、パート職員も含めて誰もが複数の工程をこなせるような教育システムを確立したい意向のようだ。

 また深澤社長は、いくら高度な技術を有しても発注がなければ仕事にならない加工業としての成長に限界を感じ、自社製品開発に強い意欲を持つ。資金や人材等のリスクが大きい装置、機器レベルの改良でなく、まずは自動機に使えるガラス部品、サファイア製刃物など、シンプルなものづくりをベースに部品メーカーへの脱皮を目指す。

 ちなみに同社では3年前より、他社との共同プロジェクトとして夜間の工事現場等で使うLED投光機や防災・防犯等に有効な強力LEDサーチライトを開発。積極的な販売活動を展開している。

 今期の売上げ見込みは約6億円。数字的にはここ数年横ばい状態だが、歩留まりを高めるなど生産効率の向上に伴い、利益率も上がっている。

 「体力がついてきた」

 数日後の中東出張に向け、伸ばしていたひげをなでる深澤社長の表情にも充実感がみなぎる。

(編集委員・矢吹彰/2015年5月20日号掲載)

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