日本レップス、公共事業で成長 民間契約拡大を目指す/上水道・建物施設の漏水調査


「民間の契約を増やしていきたい」と川島社長

「民間の契約を増やしていきたい」と川島社長

 「おんちょうぼう」と聞いて何のことかピンとくる人は、けっこうな博識か、業界関係者だろう。

 漢字にすると「音聴棒」。長さ1~2メートルの金属棒の片端に振動板を内蔵した円筒状の筐体が取り付けられた漏水調査ツールだ。棒先を給水栓や止水栓、量水器等に、筐体部を耳に当てて漏水音の有無や位置を確認する。

 「調査を行うのに公的な資格はない。聴力も人並みで十分だが、調査員として一人前の仕事をこなせるようになるには、少なくとも2年はかかる」

 こう話すのは、関東地方を中心に全国各地で上水道や建物施設の漏水調査を行う日本レップス(相模原市中央区淵野辺本町1の2の1)の川島幹夫社長だ。

 川島社長自身、33年前、25歳でこの業界に入り、調査員として修練を積んだ。5年後にグループで独立・起業し、さらに10年後、今度は単独で独立・起業。それが1996年創業の同社である。

 出身地であり大市場の横浜ではなく相模原を拠点に選んだのは、都市として発展の伸びしろが大きく感じたことに加え、当地に競合相手が見当たらなかったからだ。

 以来18年。99年の埼玉(さいたま市)を皮切りに、2000年に四国(徳島市)、02年に関西(大阪府門真市)、04年に東北(仙台市)と4つの営業所を開設し、事業エリアを拡大しながら着実に成長している。

 本拠地相模原にはいまだ同業他社は不在。ネットワークもほぼ全国規模といえる状況だが、将来へ向けて課題がないわけではない。

 創業以来、同社が基幹としてきた上水道や建物施設の漏水調査は、基本的に県企業庁や広域水道企業団、市町村水道局等による、競争入札を経ての委託契約事業。そのことが、今後の同社の発展を考える上でメリットにもデメリットにもなり得るのだ。

 公共インフラの定期的なメンテナンスだから、案件数が年ごとに大きく変動したり、将来的に急減する心配がない。また、全国各地で同業者がひしめく業界ではないから、赤字覚悟の入札に悩む必要はない。これは大きなメリットだ。

 反面、受注価格のアップが将来的に見込めないから、常に一定規模以上の案件を落札する必要に迫られる上、どれだけ実績を積み重ねても入札の際に有利に勘案されないこと。調査にかける人員、方式が規定されているため、雇用調整や設備投資等によって利益を生み出しにくいことなどがデメリットとなる。

 ただ、おそらくこのデメリットを解消する手立てはない。

 「基幹事業を変えるつもりはないが、競争入札による公共事業だけでは限界がある。今後は個人や建物管理事業者、民間企業等へのダイレクトな営業を展開し、戸建住宅やマンション、事業所等の敷地内、建物内部の調査・コンサルタント業務契約を積極的に獲得していく必要がある」と川島社長は話している。          (編集委員・矢吹彰/2015年5月1日号掲載)

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