河坂製作所、三菱グループ追従し76年。品質厳しい案件で底力/自動車・建機用ねじ部分の製造


高付加価値の案件で三菱グループに追従する田坂社長

高付加価値の案件で三菱グループに追従する田坂社長


 相模原市内には10カ所の工業団地がある。中でも田名地区に多く、1963年から64年に造成された田名工業団地は同地区で最も古い。

 ここに立地する企業の多くが古参であることはいうまでもないが、近隣に大規模な事業所を構える三菱グループとの結びつきが深い企業が多いのも特徴だ。

 自動車や建設機械用ボルト、ナット等のネジ部品を製造する河坂製作所(中央区田名3670、田坂智社長)もその一つ。創業76年を誇る同社の歴史は、そのまま三菱グループとともに歩んできた道程ともいえる。

 田坂社長の祖父・渉氏が東京・渋谷区で創業した1938年は、日中戦争の最中、労働・物資・金融等の国家統制を図る国家総動員法が制定された年である。

 製造するネジ部品の納入先は旧三菱重工で、民生用以上に軍需において重要な役割を果たした。

 戦中から戦後にかけ、同社は古河、川崎に工場を増設して業績を伸ばし、64年に相模原工場が完成すると、ここに全事業を集約。その後も三菱グループとの関係は揺るぎなく、トラックとバスのネジ部品製造に注力することで、深い信頼関係を築き上げてきた。

 現在、同社におけるトラック、バス関連部品の売上比率は全体の約7割。他の自動車関連を含めると、対三菱系企業の売上比率は約9割に上る。

 オイルショック、バブル崩壊も、アジア通貨危機、リーマンショックも、ほぼ三菱一筋の姿勢で乗り越えてきた。

 「今後も三菱グループとの取り引きを主体に事業を展開していく」
 田坂社長がこう話すのも当然だが、それは盲目的に追従していくほか術がないからではない。

 ネジ部品製造における同社の設備は非常に充実しており、冷間鍛造(圧造)、NC切削の両加工に加え熱処理も同一事業所内でこなせる。注文に応じて精度の微調整から小ロット、量産まで思いのままなのだ。

 それをあえて、三菱系企業が求める「難度が高く、納期が厳しく、小ロット」という、同業者の嫌がる案件に絞り率先して受注してきたところに、同社の強みがある。
 「手間、コストの点で他社は敬遠し、国外では技術的に困難。そこに付加価値が生まれる」と田坂社長は胸を張る。

 一方、かつてはメーカー間の強力なライバル関係が資本関係のない取引先にまで大きな影響を及ぼしていた自動車業界だが、近年はメーカー間の技術提携も増え、配下に対する“しばり”も薄らいできた。

 そんな中、同社は2010年にトヨタ系のネジ部品を手掛ける㈱メイドー(愛知・豊田市)と業務提携。

 「まだ両社で両メーカーの仕事を請け負い合うという状況には至っていないが、海外展開を含めて今後の進展に期待している」と田坂社長。

 76年の業歴には十分な重みを感じるだろうが、次世代に向けた変革を阻む重しにはなっていないようだ。  (矢吹 彰/2014年9月1日号掲載)

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