林電業社、知識 技術 経験を総動員して一品物の設計や修理に挑む/自動制御装置等の設計・製作・修理


修理事業にも力を入れる林社長

修理事業にも力を入れる林社長


 通りにはハイブリッド車、住まいにはハイテク家電品があふれ、誰もが普通にコンピュータ端末を携帯する。それでいて子どもの理科離れ、機械離れが進み、若者の技術者志向は低下し、ものづくり産業は衰退の途。それがこの国の現状だ。
 「父が勤めるプレス機会社の社宅に住み、母は日々同社の内職。部屋にはいつも工具や何かしらの部品がごろごろしていて、一人っ子にとって格好の遊び場所だった」
 自動制御装置等の設計・製作・修理を手掛ける林電業社(相模原市緑区二本松1-11-9)の屋台骨を支えているのは、林広昭社長のそんな少年時代である。
 同社は1970年、アイダエンジニアリングの技術者から独立した林社長の父、弥市氏が創業。しばらくはプレス機など各種製造業のライン設備を安定稼働させるのに不可欠な自動制御装置や開閉盤、配電盤等の製作、施工で着実に業績を伸ばした。75年から15年ほど手掛けた得意先発注の自動制御装置の量産が成長の礎となったが、現在に至る業務拡張の大きな転機となったのは、79年に成人した二代目が正式な社員として家業に携わり始めたことである。
 小学生の頃から趣味で電機や機械関連の月刊誌を10冊ほど読みあさり、中学時代には家業の手伝いがてら金属部品の穴あけ、タップ切り、研磨をマスター。こうして知識・実務とも学校での専門教育を全く受けていないにも関わらず、二代目は新入社員の時点で既に即戦力の技術者であった。
 そんな二代目が加わったことで、同業他社との違いを生み出せる新たな分野として同社の基幹事業となっていったのが設計と修理だ。
 自動制御装置や配電盤は基本的に一品物。毎回1から設計に臨む。中には製品がまだ構想段階のものもあり、この場合、生産ラインの青写真とすり合わせながら試行錯誤の上で設計していく。顧客から提供される図面をもとに装置を製作する業者は多々あるが、前例のない装置の設計までも手掛けられる業者となると極めて少ない。
 こうした柔軟で奥深い対応は修理の分野にも当てはまる。
 「修理を頼まれた装置も一品物で大半が他社製だから、行って見るまでその用途、仕組みは分からない。そこから知識、経験を総動員して直す」
 ただ、雲をつかむような難題に直面することも多い設計・修理業務を話題にする時、林社長の表情は曇るどころか、むしろ楽しそうだ。根っからの技術者なのだろう。
 当然、このような業者の評判が広がらないはずはなく、顧客名簿にある約3000社との縁はほとんど口コミ。これまで、一切営業活動を行ったことがない。
 また、設計・製作で技術的に対応不可として断った案件は全体の1割にも満たないが、受注が8割方埋まると、修理のための余力を2割ほど残しておくため、一旦新規受注は断りを入れるのだという。他社との違いはこんなところにもある。(2013年11月1日号掲載)

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