さる山さる子、主婦から起業家へ転身/独自の「整体占い」を考案


明るい外観の店舗で佐藤さん(左)と進藤さん

明るい外観の店舗で佐藤さん(左)と進藤さん


「整体占い さる山さる子」――一度聞いたら決して忘れられないインパクトのあるネーミングだ。これを店の名前にしたユニークな整体院が座間市相模が丘にできた。店主で全国唯一の「整体占い」を考案し、事業化したのが佐藤里栄子さんと友人でプロデューサーの進藤千津子さん。中国古来の算命学に基づき、心と体のケアと占いを組み合わせた施術は人気を呼び、リピーターも続々。佐藤さんが起業に踏み切ったきっかけは、一家の大黒柱の夫の会社の倒産だった。(編集委員・小宮山光賢、2013年10月20日号掲載)

■心も癒す整体

 「日頃、お客様の体に触れることで、その人の考え方や悩みなど、日々、その方がどんな気持ちで生活をしているのかという情報を得ることができます。中国の算命学という占いと体からの情報を私なりに組み合わせて『整体占い』という新しい方法で施術しているのです」と佐藤さんは話す。 力強く痛みを伴うような整体ではなく、比較的穏やかな手法で体のゆがみや凝りなどをチェックするのが特徴だ。 店内は明るく、癒される感じだ。 このように紹介すると何事もなく順調に起業し、成功しているかのように見える。 しかしここまでくるには、佐藤さんの波瀾万丈の物語がある。

■倒産から企業

 発端は、数年前の夫の会社の突然の倒産。 当時、高校生の二人の子供を持ち、住宅ローンもたっぷり残る佐藤さん一家は、途方にくれてい
た。そんな苦しい時に、温かい手を差し伸べてくれたのが友人で行政書士事務所に勤めていた進藤さんと行政書士の広重大介さん。 失業に伴う諸手続から始まり、失業保険の受給、住宅ローン返済方法、子供たちの進学問題――等々。 次々に押し寄せる問題にひるむことなく立ち向かうさまは、6月に出版した佐藤さんと進藤さんの著書「父さんの会社が倒産した」に詳しく書かれている。 この書は先の見えない時代を自己破産することなく、いかに明るく乗り越えたかが事実をもとに表現されており、共感をよんでいる。

■整体院を開く

 とくに、起業にあたっては、元自衛官でイラクにも行った熱血漢あふれる行政書士の広重さんの適切なアドバイスがおおいに役立ったという。 一般的に〝倒産〟というと暗く重いテーマにとらわれがちだが、著書では、そうしたマイナスの状況にもめげず、どう生活の再生を果たしたかが、漫画やイラストでユーモラスに描かれている。
 まさに、絵に描いたような不幸を楽しく前向きに乗り越える方法が満載。
 倒産後の煩雑な役所の手続きなども詳しく紹介されいるので、ビジネス書としても役立ちそうだ。
 さまざまな紆余曲折があり、「整体占い さる山さる子」は、佐藤さんと進藤さん、それにバックアップしてくれた熱血・行政書士、広重さんらの連携により、2011年12月に座間市に誕生した。
 商業デザイナーでもある進藤さんが店舗内外のデザインを一手に担当し、明るく温かい黄色を基調とした雰囲気の店とした。
 「まず、自分たちが楽しめなくてはお客様に喜んでもらえないし、来店してはくれない」と進藤さんは語る。
 ユニークな店名の「さる山さる子」にふさわしい店づくりが随所に感じられる。
 施術だけではなく、健康に関連する商品の開発、販売にも力を入れている。
 これまでに、四川山椒、陳皮など十数種の香辛料を素材にした健康スープ
「薬膳香辛湯」や、上質で極太の久米島天然モズクの販売もはじめてい
る。これらの商品も好調な売れ行きをみせている。

■目標は次号店

また、広重さんのアドバイスもあり、「整体占い」、「さる山さる子」はすでに商標登録済みで、「これらの名称を掲げるお店は全国でもここだけ。日本で唯一の整体占いです」とアピールする。 市内、県内はもとより、インターネットで知った地方からの顧客も最近、増えている。経営もようやく軌道に乗ってきている。
 「ここへくると、癒されるとリピーターも出てきました。現実をありのままに受け止めて、自分たちの生き方をしっかり考えつつ、地に足を付けた地道な経営を目指していきたい」と佐藤さんと進藤さんは声をそろえて語る。 さらに、将来のフランチャイズ展開も見据えて、整体占いのノウハウを伝授する教室の開設も計画している。
 夫の会社の倒産という不幸をきっかけに起業に踏み切り、みごとに成功した陰には、佐藤さんらのチームワークが欠かせない。整体占い さる山さる子」の元気で明るい2号店、3号店の開設への夢も膨らむ。


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