相模原市は4月19~24日(21日を除く)、緑区の津久井、藤野、相模湖の各総合事務所で公共交通再編に係る説明会を開いた。三ケ木―相模湖駅間の路線は維持するが、ほかの11系統を段階的に統廃合する方向性で協議中。運転士不足が理由。現在4地区で運行している乗合タクシーのエリアを拡大して対応する方針。路線バスを利用して通学している小中学生の通学手段の確保については別途検討している。【2025年5月1日号掲載】
□運転士不足で統廃合
同市緑区の中山間地域では、バス運行事業者から廃止・撤退の申し出があった場合、通学や通勤など、住民の生活交通に必要な路線として国・県・市の補助で運行を継続している生活交通維持確保路線がある。2024年6月、神奈川中央交通から運転士不足を理由に「路線の統廃合」「ほかの交通モード(形式・様式)への転換」を含めた協議の申し出があった。
市と同社は三ケ木バスターミナル以西のバス路線について、26年度までの統廃合を含めた地域交通のあり方の協議を進めている。鳥居原ふれあいの館方面は対象外となるが、旧相模原市市域(橋本、中央・南区)や城山を含む三ケ木以東のバス路線についても今後段階的に協議を行う予定。
現在は生活交通維持確保路線のほか、乗合タクシーやデマンドタクシーを運行しているが、今後は公共交通を再編。乗合タクシーで地域の移動手段を確保していく。
□11系統を廃止へ協議
三ケ木―相模湖駅間の路線2系統は乗客が多く、バスによる輸送が必要であるため、運航継続を前提に運行水準や内容も含めて協議を実施。そのほかの路線11系統については現在の乗降人数も踏まえ、廃止する方向で協議を進めている。
朝夕の移動が集中するピーク時間帯に大型車両でないと乗車人数に対応できない路線についてはバスを維持する方向。市は路線が廃止される地域について、乗合タクシーのエリアを拡大し、それぞれを接続。乗り継ぎなどで駅へのアクセスを可能とするなど、利便性向上に取り組む。
乗合タクシーは、比較的運転士を確保しやすい普通免許で対応できる車両を活用。従来の大型バスでは侵入できない生活道路に停留所を設置できるため、より生活に密接した場所で利用できる点が利点。篠原地区で運行している現行のデマンドタクシー(時刻表がない予約が運行)は乗合タクシーに統合する。
現行の乗合タクシーをベースに実証運行を実施し、利用実績などを踏まえ、本格運行の内容を定める。実証運行はことし10月から開始。実証運行における「運行日」「運行ダイヤ」「停留所」「予約方法」などについて利用促進協議会を通じて地域住民からの意見を聞き取り、今後決定していく。
□住民の負担は大きく
料金は同一運賃区域内で大人900円(初乗り500円+迎車400円)。各種割引料金の設定も検討。8つの運賃区域を設定し、区域を跨ぐ場合は運賃が加算される仕組み。これまでと同様、均一運賃を基本とする。
現状では地域・行政・公共事業者の3者が協力し、交通不便地域における移動手段の確保として乗客定員8人の乗合タクシーを根小屋、内郷、吉野・与瀬、菅井の4地区で運行している。おおむね1時間に1便程度の頻度で、均一運賃を基本にバスより高くタクシーより安い設定。地域の需要に合わせて停留所を設置し、予約があった時間、停留所のみで運行する。
市交通政策課の長澤孝課長「(ことし)10月以降、減便や運休などが徐々に始まり、令和9年3月にいきなり統廃合を行うものではない」と説明。26年1~3月に住民向けの利用方法説明会を実施するほか、バスの運行スケジュール等に変更がある場合は事前に告知するという。
市によると、19日の藤野総合事務所、20日午前の相模湖総合事務所のそれぞれの回では乗合タクシーの予約について質問が多かった。20日午後の津久井総合事務所でも「予約が不安。年を取ると予約でさえ困難になる」との声があった。