相模原市発注の公共下水道管きょ耐震化工事で、9月19日に下水道管内で作業をしていた2人が雨水に流され死亡した事故を受け、市は10月25日に安全対策検討委員会を設置し、初の会議を開いた。年内に3回の会合で事故の原因を検証し、12月をめどに安全対策の中間報告をまとめる。【2024年11月10日号掲載】
奈良浩之副市長は冒頭で「今回の事故原因がどこにあるか客観的に整理した上で、複層的な安全対策を講じたい。公共事業の発注者としての責務を果たすべく、関係機関と連携して労働災害の防止に努めていく」とあいさつした。
熊﨑美枝子教授(横浜国立大大学院環境情報研究院)、松井正人防災管理官(気象庁横浜気象台)、永長大典技術部長(日本下水道協会)、鈴木延明局長(市都市建設局)の4人で構成する。熊﨑教授が委員長に選ばれ、「下水道は生活や経済活動に極めて重要な社会インフラである。その維持管理に係る過程で2名(人)という貴重な命を落とした。議論を尽くして再発防止に努めたい」と意気込みを示した。
工事は中央区陽光台3丁目の県道相武台相模原線(通称=村富線)に埋設されている矢部雨水幹線(工事区間=約151㍍)の耐震化を図るもの。すでに設置された下水道管(3000㍉×3000㍉)の内側に、ライニング材と呼ばれる鉄製の補強材を用いて新たな管を構築する工法。地上部を掘削することなく施工することができるため耐震補強や老朽下水管きょの更新などに用いられ、2023年度末までに全国で約1万2千㌔の実績がある。
事故当時は7人が同県道に接続する市道の作業孔(マンホール)から入坑し、県道の地下約10㍍の下水管内で作業を行っていた。午後3時40分頃、雨雲を確認した地上監視員が避難連絡のために1人が入坑。同55分頃、作業孔の直下に到着したが、2人の避難が間に合わず突発的な増水に流された。午後4時29分に現場から消防へ通報があった。
同気象台の松井委員によると、相模湾から暖かく湿った空気が流れ込み、日中の気温の上昇と上空の寒気の影響で大気の状態が非常に不安定になっていた。昼過ぎに東京都多摩西部の山地で発生した積乱雲が南東に移動し、1時間に30㍉の局所的な激しい雨を観測した。
事故概要説明については非公開で委員会が行われた。非公開の委員会後、鈴木都市建設局長が記者団の会見に応えた。
鈴木局長によると、「委員の質疑応答は事実関係に関するものが多く、原因についてはこれから情報を整理して対策を考えていく段階」と説明した。委員からは「大雨注意報などの発令だけで作業の中止基準にするのは望ましくない」「局地的な積乱雲の発生予測は難しい」「作業従事者に外国人が含まれる場合、言語以外のコミュニケーションによる情報伝達を研修することが大切」などの意見がでたと話した。また、鈴木局長は「東京都などの他自治体の安全対策などを勉強し参考にしていきたい」と述べた。