県24年当初予算案、釣りやバレエで湖利用検討へ/前年度比7.8%減で2年連続


「新かながわグランドデザインの実現に向けて」。県は9日、一般会計の総額を約2兆1045億円とする2024年度当初予算案を発表した。23年度予算に比べて7・8%減となり、2年連続の減額編成となった。人口減少社会における子育てへの支援に加え、50年脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めるなど、喫緊の課題に対応していく。これに伴い、デジタルの力を活用しながら、県民目線に立った行政運営を行うことで県民の抱える不安を解消し、「だれもが安心して暮らせる優しい社会の実現」を目指す。【2024年3月1日号掲載】

□義務的経費が増大

一般会計の歳入では、6割強を占める県税収入が同期比0・2%増の約1兆3356億円を見込む。このうち、賃上げなどに伴う個人所得の増加を見込み個人県民税は、1・3%(45億9100万円)増の3570億5500万円とする。法人2(県民、事業)税は24年3月期の企業収益が最高益となる見通しで、4・4%(148億6500万円)増の3514億7500万円となった。

県の借金に当たる県債の新規発行額は、税収増に伴い同約2割減の1074億5200万円に抑えた。償還を進める県債残高は3年連続で減少に転じ、約1600億円減の約2兆8820億円、県民1人当たり31万2408円の債務が残る。

予算編成方針で300億円の不足だった財源は、介護・医療・児童関係費や人権費が250億円の増となったことで330億円に拡大。前年度の県税・地方譲与税や地方交付税の20億円の増となり200億円を確保。あわせて事業見直しによる40億円と、23年度の地方交付税の増などで290億円を確保し、均衡を保った。今後の備えとして財政調整基金の残高を620億円まで回復させた。

歳出は、人件費や福祉関連費などの支出が避けられない義務的経費について、介護・医療・児童関 係 費が4・7%増の4672億9300万円に膨らみ、同2・7%増の約1兆6933億円を計上。20年間で約3・4倍となっている。

政策的経費では公共事業が同6・8%増の約554億円、県単独土木事業が12・5%と膨らんだが、新型コロナウイルス感染症対策費を含む「その他」が53・1%減となったことで、全体では32・8%減の4111億7700万円とした。

 □湖釣り利用やバレエ

新年度は9つを重点事業とし、そのうち「行ってみたい神奈川の魅力づくり」では新たに1499万円を配分。宮ケ瀬湖での釣りの実現可否を判断するため、国や地元市町村、宮ケ瀬ダム周辺振興財団とともに、周辺地域の活性化策も含めた調査を行う。

釣り利用の検討を進める宮ケ瀬湖

釣り利用の検討を進める宮ケ瀬湖



相模湖周辺地域活性化推進事業には1000万円を計上。地域が主体的に取り組む「芸術・文化のまちづくり」の機運醸成に向けて、相模湖交流センターを活用したバレエに関するイベントを実施する。

 

 □中小企業に「稼ぐ力」

県内経済・産業活性化には、約195億円規模を計上し、企業や家庭などさまざまな主体の取り組みを後押しする。特に中小企業には総額93億円を超える予算を割き①生産性向上②事業承継・創業等③労働力不足④支援機関を通じた伴走―の支援を講じる。労働生産性向上とそれを原資とした賃上げという好循環を実現し、地域経済の持続的な発展を図るとする。

物価高騰や深刻な人手不足など厳しい環境にある中小企業を支援し、生産性向上に資する設備導入等に対して補助する「中小企業生産性向上促進事業費補助」に42億5062万円を盛り込んだ。また、小規模事業者デジタル化支援事業費補助(1億1030万円)では、人手不足が深刻化する小規模事業者の生産性向上や販路拡大を図るため、デジタル化に向けた設備やシステム導入等に対して補助するとともに、専門家の支援を行う。

成長産業の創出・育成ではロボット産業の成長を促進するため、ロボットの開発や実用化の支援、導入促進、普及定着に重点的に取り組み、社会実装をさらに加速。ベンチャーなどの創出・育成や、先端技術を活用した新たな価値の創出支援に取り組み、成長産業の創出・育成を図ることで、県内経済の持続的な発展を目指す。

このうち、介護生産性向上推進事業(7億2555万円)では、介護施設などへの介護ロボットやICTの導入に対して補助するとともに、新たに介護現場の革新、生産性向上に向けた取り組み方針の検討を行う会議を開催するほか、ワンストップ型の相談窓口を設置する。

介護ロボット実用化促進事業(2億円)は、介護施設、在宅介護が抱える課題を解決するため、介護に適したロボットの実証及び効果検証を行う。実証結果を分析することで、実用化に向けた改善を行い、介護ロボットの開発を促進する。

 □浄水場再整備へ委託

公営企業会計では、谷ケ原浄水場(相模原市緑区谷ケ原2)の再整備に5176万円を計上した。42年度末までの再整備を目指し、24年度は基本計画の策定に向けた基礎調査と検討業務を委託する。土木施設や電機設備が今後更新の時期を迎えるため、脱炭素化や自然災害・セキュリティ対策を踏まえた、浄水処理施設全体の再整備を行う。【関連記事あり】

老朽化した相模ダム(同区与瀬)のリニューアルには16億4126万円を配分。23年度に策定した実施計画に基づき、仮桟橋や仮締切の構築などを行う(本体工事)。付帯工事(電気機械工事)では、既設ゲート開閉装置の整備・移設などを行うとともに、設備の詳細設計などの調査設計を委託する。28年度までの継続で計109億6300万円を見込む。

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。