小田急線延伸「課題多く」/鉄道10社に要望書、県と沿線市町


県や鉄道沿線の市町村などで組織する「県鉄道輸送力増強促進会議」は16日、横浜市中区で総会を開いた。JR横浜線淵野辺駅の整備や小田急多摩線延伸の早期実現のほか、新たに「無人駅および駅員巡回型の駅の乗車人員の公表」などを加えた要望書をJRや私鉄の10事業者に提出した。【2023年11月22日号】

鉄道輸送力
□JR、相模原の各線

JR相模線では、無人駅や駅員巡回型の駅の乗車人員が公表されなくなったことで、沿線市町のバリアフリー対策やまちづくりなどに支障をきたしていると指摘。番田、下溝、相武台下など各駅の乗車人員の公表を求めた。国の基本方針によると、駅乗車人員が段差の解消や転落防止設備の整備などを実施する目安となっている、とする。

同会議ではこれまでも、複線化の早期実現を要望している。JR東日本からは「利用状況などを勘案すると、莫大な設備投資を必要とする複線化は難しい状況にある。今後の沿線の開発状況や利用動向などを総合的に判断し、長期的に検討する必要がある」との考えが示された。

JR横浜線では、複数の大学がキャンパスなどを設置している淵野辺駅の利用者が増加していることを挙げ、快速の停車をこれまでに続いて要望。同相模線では、通勤・通学時間帯の横浜線乗り入れを再開するよう求めた。

同中央本線についての要望では、相模湖駅や藤野駅を発着する電車の運転間隔について「30分以上の時間帯があり、利用者にとっては不便な状況」と訴えた。「相模湖・藤野地域が都心から近い観光拠点となっている」とした上で、利便性向上や観光振興・観光拠点へのアクセス向上のため、運転本数の増加を図るよう求めた。

同社からは「日中時間帯等は特急列車待ち合わせなどのための運転間隔を一定に保つことが困難」との回答があった。観光需要などでのアクセス向上についても「コロナウイルス感染拡大を契機に鉄道利用は減少しており、コロナ前の利用状況に戻ることはないと考えており、現時点で運転本数を増やすことは非常に厳しい」としている。

藤野駅ホームの屋根延長が「1両半程度と不十分」と指摘し、さらなる延長増設を要望。これに対し、事業者は「中長期的な計画として乗降人員などを勘案し、順次整備を進めていく」とした。

□延伸に「意義あり」

唐木田駅(東京都多摩市)からのJR相模原駅や上溝駅方面への小田急多摩線延伸は、相模総合補給廠(しょう)一部返還地のまちづくりを進める相模原市にとって、「東京方面との重要なアクセス、将来の望ましい都市構造を形成する上で必要不可欠」とした。

また、JR上溝駅から田名地区や愛川町を経由し、厚木市の本厚木駅まで延伸することを要望。公共交通網が拡大されることで、「延伸線の沿線地域で観光客の増加や産業経済のさらなる活性化が見込まれる」と訴えた。

小田急は、上溝駅までの多摩線延伸について「関係者会議にて検討が進められており、関係者会議による2019年5月の報告では、いまだ課題も多く残っている」と説明している。加えて「昨今のコロナ禍におけるテレワーク定着など、鉄道利用に関わる社会環境も変化しているため、地元自治体のまちづくりによる需要創出に注視しつつ、関係者会議における検討に協力する」とした。

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。