東海大のロケット、5年ぶり打ち上げ成功/次世代の宇宙技術者に期待


JAXAの次期主力ロケット「H3」初号機が発射後、2段目のエンジンに着火せず打ち上げに失敗した。しかし、その4日前に学生が手掛けるロケットプロジェクトが小さくも確実な一歩を踏み出した。

大樹町で打ち上げられた東海大のロケット

大樹町で打ち上げられた東海大のロケット



東海大学(平塚市)で航空宇宙分野を学ぶ学生らで開発した小型ロケットが4日、北海道で打ち上げに成功した。学生の打ち上げ経験を積むことができたとし、「将来の宇宙空間到達と超音速飛行に向けた技術実証に成功した」と説明している。

今回打ち上げた「ハイブリッドロケット57号機」は、固体燃料と液体燃料を使うハイブリッド式。2016年の打ち上げ時にロケット先端のノーズコーンが脱落し、機体が空中分解したため、ノーズコーンを分離する機構を改良し強度を高めている。

東海大学学生ロケットプロジェクト(TSEP)は、宇宙技術者を目指す学生が実践的な知識や技術を得ることを目的とし、年2回、秋田県能代市と大樹町で1回ずつ実験を行っている。04年から北海道大樹町で実験を続けてきたが、コロナ禍の影響で5年ぶりの打ち上げとなった。

17年には成功したが、18年に失敗したまま学内でのロケット製作は困難になり、当時のプロジェクトメンバーは相次いで卒業。今回は教員を含む26人が町内を訪れたが、学生全員が打ち上げ未経験者となる不安を抱える中での挑戦となった。

ロケットの打ち上げ経験を得るとともに、最終目標の高度100㌔以上の宇宙到達に向けて次機体以降の開発方針を明確にすることが狙い。確実な打ち上げとロケット回収後の解析を図り、数年後の超音速機につなげる。

ロケットは全長約2㍍、直径154㍉で、燃料や酸化剤を含む重量は11㌔。

予定通りエンジンを燃焼し、打ち上げ後9・32秒で高度416・45㍍に到達。パラシュートを開いて、射点から北北東440㍍の地点に落下。機体を無事回収できている。

機体には市販のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)チューブを主体としたモジュール構造を採用。アルミニウム合金製のリングで6個のモジュールを結合している。固体燃料にはろう、液体酸化剤として液化亜酸化窒素を採用し、推力は660ニュートン(67・3重量㌔㌘)に達する。

実験を行った「北海道スペースポート」はアジア初の民間企業にひらかれた商業宇宙港として大樹町が整備、運営している施設。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大学、民間(三菱重工)などの研究機関が集積し、1000㍍の滑走路やロケット発射場などを使った航空宇宙分野の実験が多数行われている。

実験責任者は「なかなか打ち上げを経験できなかったので安心した。この成功体験を後輩にも受け継ぎたい」と話す。日本の宇宙開発の未来はまだ明るい。

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