米国の企業経営者、相模原の武道環境を福利厚生に活用/スポーツツーリズム事業も検討へ


米国カリフォルニア州で、無添加・天然素材のせっけん製造・販売を手掛けるマックスウェルズ・ソープ社が、相模原市緑区の城山地域を拠点としたスポーツツアーや社内福利厚生を兼ねた取り組みを検討している。同区を拠点に鍼灸師やコンディショニングトレーナーとして活動する岡川智行さんが、城山商工会などの協力を得て受け入れ、市内のスポーツ団体や各事業者などとの調整や交渉を支援する。【2023年4月13日号掲載】

市弓道協会の関係者から指導を受けるマックスさん

市弓道協会の関係者から指導を受けるマックスさん



「日本の武道と文化で、地域の観光需要を増やしたい」と語るのは、同社CEOのマクスウェル(マックス)・ムーアさん。自身も空手や柔術など日本の武道や文化に関心があり、オンラインで仕事をしながら4月から6月末まで城山に滞在する予定。城山剣友会(剣道)や市弓道協会の稽古を体験しながら各所を視察。社員滞在時の拠点となる場所を探しており、すでに城山地域の5~6カ所に絞り込んでいる。

共通の知人を介して知り合った岡川さんは、これまでも各国からスポーツ選手や要人などを受け入れたことがあり、「城山近辺は宿泊施設が少ない」と課題を話す。マックスさんはオンラインで米国とのやり取りをしており、城山滞在中に仕事ができる場所の確保も必要になりそうだ。

元米海軍の退役軍人というマックスさんは、特殊部隊を支援する衛生兵として派遣されたアフリカや中東などで、現地人の過酷な貧困を目の当たりにしてきた。帰国後のロサンゼルスでも、路上生活者のひどい生活環境に衝撃を受けた。

2013年に同社を起業し、人体や環境に優しい無添加・天然由来の素材でせっけん作りを始めた。売れたせっけん1個ごとに、路上生活者に1個のせっけんを贈るなど、社会貢献的な事業に取り組んでいる。

退役軍人に職業を提供することも事業目的の一つで、現在、元軍人7人を雇用している。戦地から帰還した現役・退役軍人の中には、常に命の危機にさらされてきたストレスからPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病に悩まされるケースも少なくないという。

同社のスポーツツーリズムは、身体を動かす楽しみや心身のリラックスを目的としたスポーツセラピーも狙い。マックスさんは「剣道や弓道は心を静め集中する必要があるため、従業員や友人のストレス緩和が期待できる。武道はPTSDに苦しむ仲間を助けてくれるはず」と話す。

1997年から3年ほど佐世保基地(長崎県)に配属されたことはあるが、神奈川県など関東圏は初訪問。相模原の印象について「治安が良く、程よく都会、程よく田舎。健康的な野菜も採れ、武道の練習に使える場所も多い」とし、「ソーシャルメディアを通じて米国に配信しているが、社員や友人からの評判は上々」と手ごたえを語る。

NPO法人城山スポーツ&カルチャークラブめいぷる(平栗文夫理事長)が開いているノルディックウォーキング教室などにも参加。日本工学院専門学校(八王子市)の柔道部や居合部とも交流する計画もある。

マックスさんは「小さな道場が多くあるのが魅力的」とし、城山での生活についても「体も心も健康になった気がする。食べ物も質が良く、ストレスが減って活動的になった」と話し、表情をほころばせた。

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