県と3政令市、特別自治市議論で平行線続く/相模原市長「選択ができる制度必要」


横浜市役所で開かれた4首長の懇談会=記者撮影

横浜市役所で開かれた4首長の懇談会=記者撮影



広域自治体(都道府県)から基礎自治体(市町村)への権限や財源を移譲することで二層から成る地方自治制度、いわゆる二重行政の解消を目指す特別自治市構想について、県知事と相模原・横浜・川崎の3政令市長が6日に横浜市役所で会談の場を設けた。県と政令市がそれぞれ見解を示したが、議論は平行線を辿る。法制化に向けては一致する政令市だが、実際に移行するかについては温度差もみえてきた。【2022年5月20日号掲載】

3政令市長は少子高齢化や人口減少の進行などを背景に、持続可能な行政運営に向けて特別自治市の必要性を訴えた。これに対し、黒岩祐治知事は「現行制度下でより一層の協調連携の取り組みを推進すべき」との見解を示した。それぞれ「住民目線で解決を図る」という点で一致をみせたが、見解の相違が改めて浮き彫りになった。

川崎市の福田紀彦市長は特別自治市移行の必要性について「地域特性に合わせた地方自治制度の再構築」「基礎自治体としての大都市にふさわしい権限・財源(の確保)」を挙げる。2020年以降人口減少に転じたことや、加速度的に進むインフラ老朽化を指摘して「活力維持のため、大都市制度改革はまったなし」と強調した。

黒岩知事は特別自治市への移行が実現した場合の影響について①県が担う総合調整機能の喪失②政令市以外で行政サービス水準の低下③県有施設の移転などによる新たな費用負担の発生―などと説明。「住民目線から見て法制度化することは妥当でない」との見解を改めて述べた。二重行政の解消についても「政令市の要請に応じて、必要なことから実現してきた」との認識をみせた。

相模原市にとっての二層制のメリットについては、さがみロボット産業特区を例に挙げた。県が市内に53社を誘致し、そのうちの11社がロボット関連企業であるとし、黒岩知事は「県と政令市が相互に協力・補完することでより大きな成果になる」との考えを語った。

相模原市の本村賢太郎市長は「地域住民が自分たちの目指す自治体の姿を描けるように、特別自治市を選択ができる制度が必要」と話す。県市長会の会長としても「政令市が独立すれば、社会資源を他の市町村に注力できるはず。県の広域自治体の役割をより発揮できるのでは」と肯定的な見解を示した。

懇談会後の会見では、本村市長は法制化に前向きな姿勢を示しつつも、横浜・川崎に比べて議会や市民間での議論が成熟していないことを理由に「現段階では言い切れない」と移行について具体的な発言を避けた。来春の市長選については「もし出るなら、特別自治市(構想)について公約に掲げて戦っていきたい」とも述べた。

黒岩知事は「(それぞれの)市民から県から独立したいという声が上がれば機が熟した時とみる」とした上で、横浜市内に住む市民として「独立したいという気持ちがあるかというとピンと来ない」と明かした。

 

【特別自治市】政令市が道府県の事務・権限を担う制度で、都府県と政令市の重複する業務「二重行政」を解消して人員やコストを縮小できると期待される。ただし、現行の地方自治法に類似した制度がなく、全国20政令市でつくる指定都市長会が法制化に向けた動きを強めている。

県が相模原市域内に保有する施設は、警察関連施設や公園など127施設で財産価格1493億円(土地約1050億円、建物約442億円)を超える。相模原市が特別自治市に移行した場合、市には県有施設などの移管費用や債務の引き受けなどが発生すると想定されている。

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