長縄達矢氏(カプスゲル・ジャパン)、医薬品・食品のハードカプセルを世界へ


「付加価値の高い製品を」と話す長縄社長

「付加価値の高い製品を」と話す長縄社長



相模原市中央区南橋本に工場を開設してから53年。医薬品や健康食品用のハードカプセルを生産するカプスゲル・ジャパン(代表取締役社長・長縄達矢氏)は、高度な専門知識と最先端技術を駆使した高品質のカプセルを国内だけでなく、世界各地に供給しているグローバル企業だ。市内に本社と工場を置き、半世紀以上にわたり操業している外資系企業は極めて珍しい。昨年、化学とバイオテクノロジーの世界的企業ロンザ(スイス)と統合。市場拡大を加速し、業績は好調に推移している。

(編集委員・戸塚忠良/2018年4月1日号掲載)

■カプセルを製造

カプスゲル(Capsugel)の前身は、1960年米パーク・デービス社が出資して日本に設立したパーク・デービス㈱。65年南橋本の国道129沿いに相模原工場を開設し、加工機2台で生産を開始した。

その後、合併と組織変更、ISO9001取得などをへて2002年、現在のカプスゲル・ジャパン㈱に社名変更。04年にISO14001の認証を取得した。

現在の従業員は約200人。世界各地の様々な需要に対応するため工場は3交代24時間稼働している。従業員の中には長く勤めている人が多く、自転車通勤する人もいるなど地元との密着度は低くない。

また、地域の環境保全にも関心を持ち、市内企業などで組織する、相模原の環境をよくする会に加入している。

 

■2分野の業務

主な業務は医薬品と健康食品向けのハードカプセルの開発・製造・販売。100カ国以上に4000社以上の顧客を有し、世界に広がる生産・営業拠点を合わせて年間2000億個以上のカプセルを生産、供給している。カプスゲル製のハードカプセルは、病気の予防段階から治療段階に至るまで、幅広い市民の健康にとって、身近な存在となっている。

医薬品事業は、医療用医薬品・一般医薬品向けハードカプセルの製造・販売事業。また、医薬品メーカーや大学病院などの研究機関向けに、製剤研究の段階から小動物を使った非臨床試験、さらに臨床試験までの医薬品開発の流れに合わせた受託製造開発サービスを提供している。

一方、健康食品事業は、2000年に健康食品向けハードカプセルの使用が認められて以来の新しい事業。医薬品受託製造開発で培った研究開発・製造技術を生かし、幅広いサプリメントの開発ニーズに応えるオンリーワン製品を製造している。

なかでもLicaps®は、ハードカプセルに液体を充填できるという他には無い特長を備えたもの。また最近話題の腸内環境への関心の高まりに応える、胃酸から素材を保護する耐酸性カプセルもそろえる。。

今後も新製品・新サービス・アプリケーションの開発を通じて、顧客と共に成長を目指す。

 

■ロンザと統合

2017年7月、カプスゲルはロンザ社(Lonza)と統合し、ロンザグループの一員になった。

ロンザは医薬品原体をはじめとする化学製品、バイオテクノロジー関連商品を製造・供給しており、これらの分野の開発支援でも業界をリードするトップ企業とされる。

世界に100を超える拠点を持ち、約1万4500人の社員を擁するグローバル企業で、創業以来1世紀にわたって蓄積した経験と専門知識を基に、人々の健康的な生活に貢献し、生活全体の質を向上させる顧客ソリューションに努めている。

具体的な製品は医薬品有効成分、飲料水殺菌剤、栄養成分・パーソナルケア成分、農業製品、工業用保存料、ウイルス・バクテリアなどの病原菌に対処する微生物制御ソリューションなど多種多様だ。

 

■長縄社長は語る

カプセルを生産するカプスゲルが、世界のマーケットに医薬品などを供給するロンザグループの一員となった効果について、両社の日本法人の代表取締役を務める長縄達矢氏(53)は「カプスゲルとの統合により、末端顧客のニーズや声を聞き、ワンストップで対応できる体制になった意義は大きい。」と力強く語る。

グループ加入後のカプスゲルの将来について、「ハードカプセルは原薬と患者・消費者とをつなぐ役割を果たしています。これからの時代、医薬品と健康栄養食品の分野で患者さんや消費者に役立つ、今までにない高品質なハードカプセルへの需要はいっそう高まると思います。また、様々な企業からこの製品をカプセルに入れたい、という相談も多く、その意味でもカプスゲルは企業として高い可能性を持っています」と展望。

ロンザの今後についても「企業は何が本当に求められているかを知り、対応することが大事。当社に求められている新しい価値の創造に努め、国際マーケットにおける日本企業のプレゼンスを高めたい」と意欲的に語る。

相模原で半世紀余りの歴史を重ねるハードカプセル製造企業は、化学品のグローバル企業の一員として世界市場への参入を加速しそうだ。

 

 

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