大石方哉さん、東林間の商業振興担う/地域一帯の「わぁ!カーニバル」


三味線の腕前はプロ級の大石さん

 三味線の腕前はプロ級の大石さん



阿波踊りで相模原市の夏を盛り上げる「東林間サマーわぁ!ニバル」が8月5・6日に開催され、26回目となる今年も約50連(阿波踊りの団体)が街を踊り歩いて大いににぎわった。実行委員会の柱である東林間商店街振興組合は今年、商店街と個店がこの祭りに地域と一体になって取り組んでいる姿勢が評価され、第5回「かながわ商店街大賞」で準大賞を受賞した。小田急江ノ島線東林間駅周辺の商業者が手を携えて街の発展に寄与してきた足跡を、地元生まれの大石方哉理事長(55、大石畳店)に聞いた。(編集委員・戸塚忠良/2017年8月20日号掲載)

■振興組合発足

東林間商店街振興組合の前身は、1956年(昭和31)に10数人の有志が結成した東林間商栄会。当時は駅前にも畑や野原が広がり、駅の一日平均乗車人数はわずか541人。「停車場で待っている乗客が手を挙げて合図しないと、電車が止まらない」というまことしやかな話がまかり通るほどだったという。

そんな時代に生まれた商栄会は、街の発展と歩調を合わせて着実に会員数を増やし、85年に法人化を実現した。

この年、市が商業ビジョンを策定したのに伴い、組合内に東林地区商業ビジョン推進委員会を設け、宅地の有効利用、道路・補導の整備、特色ある商店づくり、魅力あるイベントという4つのテーマについて調査・研究を進め、街区別整備計画を策定した。

この地区計画が高く評価され、88年6月、建設大臣表彰を受けた。

■わぁ!ニバル

その後、商店街のPRイベントを開催し、また東林間の活力と魅力づくりを目指して組織されたまちづくり推進協議会に参加して地域との連携を深めていった。

こうした蓄積をへて92年、第一回「サマーわぁ!ニバル」を実施した。昼間はハワイアンバンド、フラダンス、夜は阿波踊りで真夏の街を彩り、見物客の喝さいを浴びた。

若い消防団員として実行準備に奔走し、当日は焼き鳥の出店を出したという大石さんは「大和市の阿波踊り会の協力で、とても盛り上がった。二回目からは地元の連を立ち上げ、その後も各地の阿波踊り連に参加をお願いした」と回想する。

毎年約15万人の見物客でにぎわうこの祭りの特長は、地域の商業者やスポーツ団体、ボランティア、NPO、さらには地元上鶴間中の生徒らが参加し、地域が一体になって運営していることだ。

■りんりんカード

組合はこのほかにも、サマーセール、歳末大売り出しという定番のセールや、7月の西口まつり、11月3日文化の日には、けんちん汁をふるまうけんちん祭りといったイベントを実施しているが、日常的な販促活動の切り札は「りんりんカード」だ。

商店街の衰退という全国的なすう勢を背景に、組合の生き残りをかけて96年7月、82店舗が参加して始まった。

りんりんカードは通常100円で1ポイント。400ポイントで満点となり、500円相当の買い物ができる。満点カード11枚でディズニーランドチケット、4枚でホテルセンチュリーの昼・夕食券を提供する。地方の名産品などとも交換できるしくみだ。

カードは多くの地域住民に利用されており、組合員の手作りチラシなどでいっそうの普及を目指している。

■「地域振興を」

大石さんは「商店街大賞の受賞は意外だったが、表彰式に黒岩知事も出席していたので、名誉ある賞を頂いたと感激した」と声を弾ませる。

その一方、組合にとって、市内で最も多いという136基の街路灯、それに市内で一番早く設置した10台の防犯カメラのメンテナンスは、お金がかかるだけに頭の痛い問題。防犯カメラの設置には助成金がでるが、その後のメンテナンスに助成はなく、商店街の負担となってしまっていると指摘する。

実は、大石さんには別の顔がある。津軽三味線の本格的な演奏家という顔だ。中学生のときから習い始め、高校生の頃にはNHK若手民謡グループ「といちんさ」のメンバーとしてテレビ出演するほどの才能を発揮。畳づくりのかたわら、有名民謡歌手の伴奏を務める経験も積んだ。

しかし、40歳をまえに舞台と家業の掛け持ちというハードな生活で体をこわし、舞台を後にして家業と地域活動に専念するようになった。「今でも趣味は三味線」と柔和な顔をほころばせる。

そんな一面も持つ大石さんだが、東林間への愛着心はだれにも負けない。2年目となる理事長として、「オープンな組合運営を心がけている。事業がマンネリにならないよう意見を出し合い、販促につながる事業を展開していく」と抱負を語り、「組合の中には行動力のある若手が何人もいるし、元気いっぱいの30代、40代が積極的なのも心強い。これからも地域の人たちと力を合わせて東林間の活性化と振興に努めたい」という言葉に力をこめる。

 

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